便だけで健康かどうかは判断できない

一方で、みんな便には敏感です。下痢も便秘も嫌なものだし、すかっと快便で毎日を気分良く過ごしたいからでしょう。

しかし、便秘で死ぬことはありません。昔はコレラでひどい下痢をして脱水症で死ぬ人がいましたが、点滴が発明されて過去の話となりました。

「便の状態は健康のバロメーター」と考えて毎日気にかけている人も多いでしょうが、便を見て健康か否かの判定はなかなか下せません。

というのも、いくらすかっと快便であっても、それによって有毒物質が体外に出るわけではありません。便に含まれているのは、食べたもののカスと腸内細菌の死骸、大量に出た消化酵素などです。

デトックスという“インチキ商売”

前述したように、便に含まれるのはすべて「体外」のものです。重要なのは「体内」に発生する有毒物質をいかに確実に体外に排出するか。それを行うのは、もっぱら腎臓の役割なのです。

カラフルなスムージーのボトルと食材
写真=iStock.com/Mizina
※写真はイメージです

多くの人が間違っているのですが、解毒の本質は、大腸をきれいにすることではありません。腎臓をしっかり働かせることです。それをわかっていないと、効果の不確かな、怪しげな「デトックス商売」にはまってしまいます。

体から毒を出すという「デトックス」がなかば趣味のようになっていて、断食、ハーブ、イオンフットバス、コーヒー浣腸かんちょう……いろいろ試したい! という人がときどきいます。

残念ながら、どれも解毒には役立ちません。そもそも、デトックスという言葉は医学の場で扱われていません。医学的に効果が確認されたものはなく、“インチキビジネス”に無駄なお金を使っているだけだと、早く気づきましょう。