男性も“稼ぐプレッシャー”から解放される

この家族関連支出が増えると、女性の就業率が上昇します。図表8で、いくつかの国の事例をまとめてみました。

就労適齢期女性の就労率と家族関連支出

近年、イギリスでは家族関連支出が増えており、女性の就労率も一緒に上昇しています。

前田晃平『パパの家庭進出がニッポンを変えるのだ!』(光文社)
前田晃平『パパの家庭進出がニッポンを変えるのだ!』(光文社)

実は、日本の家族関連支出も、他国と比べてケチケチしているとはいえ、増えています。女性の就労率も、やっぱり上昇! ある意味、伸び代しかないですね(上司が部下を励ます時によくいうやつ)! 一方、アメリカは家族関連支出を絞っており、アメリカ人女性の就労率は近年低下しています。自己責任論が強いアメリカらしいといえばらしいですが……。

 

なぜこうなるかというと、家族関連支出が増えると、現在女性が過剰に担っている家事育児を社会がサポートできるようになるからです。出産や育児に必要なお金が減り、保育・教育施設が充実するから、安心して子どもを預けて働けるようになります。こうなってようやく、男性も「ガンガン稼いでこないと……」というプレッシャーから解放され、安心して生き方を考え直せます。結果、女性の家事育児負担はますます軽くなり、いよいよ後顧の憂いなく社会進出できる、というわけです。まったく、道理でありますな!

妻が専業主婦になると2億円損する

女性が出産育児によるキャリアの機会損失をなくすことができれば、世帯収入は大幅にアップします。内閣府「国民生活白書」(2005)で示されたケースでは、妻のキャリアが妊娠出産によって損なわれなかった場合、生涯所得が2億円以上もアップしています(図表9)。2億円……(じゅるり)。

出産で仕事をやめると、2億円損をする

家計が豊かになれば、おサイフの紐も緩みます。ジェンダーギャップが解消する時、日本経済くんも30年の長い昼寝からようやく醒めてくれるのではないかと思います。

そしてその時には、少子化も改善しているかもしれません。国立社会保障・人口問題研究所「第14回出生動向基本調査〜結婚と出産に関する全国調査」によれば、既婚女性が理想とする子ども数を持たない理由のぶっちぎり1位は「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」です。男性が安心して家事育児でき、女性がキャリアを損なうことがなくなれば、その悩みは解決するはずなのです。

前田 晃平(まえだ・こうへい)
マーケター/認定NPO法人フローレンス 代表室

1983年、東京都出身。慶應義塾大学総合政策学部中退。リクルートホールディングス新規事業開発室プロダクトマネージャーを経て、現在、認定NPO法人フローレンスでマーケティング、事業開発に従事。政府・行政に政策を提案、実現するソーシャルアクションを行う。妻と娘と三人暮らし。毎日子育てに奮闘中!