メンバーの心理的負担も低減できる
日常管理板の活用で心理的な負担が減るのは、マネージャーばかりではありません。「誰が何をするべきなのか」が明確になると、メンバーたちの心理的な負担も減ります。
また、メンバーたちは、方針や目標を達成するための管理指標をクリアすることが、評価の対象になることがわかっています。つまり、日常管理板があると、「何をすれば評価されるのか」がわかるので、力を注ぎ込みやすくなるのです。
「クリアすべき管理指標があり、そこに向けて毎日やるべきことが決まっているわけです。もちろん全力で取り組みますが、もし管理指標を達成しても方針や目標が達成できなかったとしたら、それは『マネージャーが設定した管理指標が正しかったのか』、『メンバーに仕事をやり切らせるという、マネージャーの役割をきちんと果たせていたのか』と、最終的にはマネージャーの責任が問われるものになります。
つまり、メンバーたちが安心して仕事に取り組めるようになるのです」(生駒)
マネージャーの最も重要な職務とは
マネージャーにとって、「現場で何が起きているか」を知るために、現場に関与することはもちろん大切です。ただ、そこで最も重要な職務は「管理」であり、汗をかいて実務や実作業をすることではありません。
しかし、先ほどの例のように、メンバーのミスや業務の遅れをフォローするためにマネージャーが実作業に回ってしまうことは、オフィスでも往々にしてあるのではないでしょうか。
もちろん、緊急時には避けられない場合もあるでしょう。しかし、頻発したり常態化したりして管理業務が滞り、ほかのメンバーへの目配りがおろそかになっては元も子もありません。
マネージャーが自分の仕事を楽にするだけでなく、結果としてメンバーたちも働きやすくするために、日常管理板は役立つのです。
トヨタとリクルートが設立したコンサルティング会社。在籍40年以上のベテラン技術者が、豊富な現場経験を活かした人材育成、変化に強い現場づくり、儲かる会社づくりを支援。製造・食品・医薬品・金融など、さまざまな顧客企業にサービスを提供。著書に20万部超のベストセラーとなった『トヨタの片づけ』のほか、『トヨタの日常管理板』『トヨタの習慣』『トヨタの段取り』『トヨタ仕事の基本大全』『トヨタの問題解決』『[図解]トヨタの片づけ』(すべてKADOKAWA)など累計100万部を超える。