カマラ・ハリスのスピーチの原点
バイデン大統領は、昨年2020年12月のCNNとのインタビューで、“I’m going to keep my commitment that the administration, both in the White House and outside in the Cabinet, is going to look like the country.”と言って、ホワイトハウスの閣僚もそれ以外の人事も、アメリカという国の姿を反映させるものにすると約束した。
その結果、アメリカの政治におけるダイバーシティは、今、その歴史上例をみないぐらいに進み始めている。15人の閣僚のうち半分が女性であり、黒人、ヒスパニック、ネイティブインディアンのルーツを持つ人など、さまざまな顔ぶれが政権の中枢にいる。財務長官のジャネット・イエレンをはじめ、内務長官には、ラグナ・プエブロ族の一員で、ネイティブ・アメリカンの女性として初めて米国の国会議員になったデブラ・ハーランド、商務長官にはジーナ・レモンドなどがいる。ホワイトハウスの幹部スタッフもその6割が女性だ。
また、アメリカの調査機関、ピュー・リーサーチ・センターによると、1月から始まった連邦議会は、アメリカ史上始まって以来の多様性がある議会だという。黒人、ヒスパニック系、アジア系、アメリカ原住民のルーツを持つ議員が124人。議会全体の23%を占める。女性議員の数も、アメリカ史上初の女性議員のジャネット・ランキンが下院に当選した1917年以降、順調に増え、今年一月の時点で両院で144人、全体の27%を占めるようになった。
ところでこの女性初の下院議員のランキン氏が最初に当選した時、“I may be the first woman member of Congress. But I won’t be the last.(私は初めて議会に当選した女性かもしれません。でも私は最後ではありません)”と言ったそうだ。この言葉、どこかで聞いたことはないだろうか。
そう、アメリカ初の女性副大統領になったカマラ・ハリス氏が11月の選挙後初めておこなったあの有名なスピーチとそっくりなのである。“I may be the first woman to hold this office. But I won’t be the last.(私は最初の女性の副大統領になるかもしれませんが、最後ではありません。)”ハリス氏は、ランキン議員によって女性たちが勝ち取ってきた参政権運動の歴史に、自分自身を重ね合わせたのではないだろうか。