すでに24社が参加を表明

ですが既にその方法も破綻しつつあり、新たなシステムの構築が喫緊の課題になっている。

そんな時代の流れを受け、この春から日本でも展開が始まる、ループ。ブランドパートナーとして、すでに味の素や資生堂、P&Gなど24社が名乗りを上げていますが(21年2月末現在)、興味深いのは「江崎グリコ」と「ロッテ」など、一般に競合と呼ばれる企業も、共に名を連ねていること。

「賞味期限があまりに短い商材は難しいですが、基本的にはわれわれの主旨に共感してくださる企業とは、前向きにご一緒したい」とカワバタさん。

メーカー側も、ループの活動に参加することで「サステナブル意識が高い企業」とのブランドイメージを抱いてもらえるほか、「リピーター」を獲得しやすくなり、カスタマーエクスペリエンス(CX)の向上にもつながるでしょう。

ループ・ジャパンの強みと課題

マーケティングや営業の世界で、よく用いられるフレームワークに「FABE(ファブ)分析」があります。

FABEはFeature、Advantage、Benefit、Evidenceの頭文字をとったもの。ビジネスの特徴を社内外にプレゼンする際、この4つを抑えておくと分かりやすいと言われます。

【図表2】FABE分析

ループ・ジャパンには「捨てるという概念を捨てる」という明確な特徴(F)があり、日本ではまだブルーオーシャン市場ゆえに優位性(A)も高い。

さらに、一顧客にはオシャレで機能性の高い容器を提供しやすいほか、参加するメーカーにもブランドイメージやCXの向上などのメリット(B)を与え得るはずです。

強いて課題を言えば、「E」のEvidence(証拠)でしょう。

先の通り、ループは計算上、一定回数の循環によって「元が取れる」システム。ただし今後、東京から地方へと対象地域を拡大した場合、どうしても物流や容器回収の際に効率が落ちるため、計算通りのEvidenceを示せるかどうかは未知数です。

そのカギを握るのは、たぶん私たち自身でもあります。すなわち、消費者一人ひとりが「廃プラをなくす」との強い意識を持つことで初めて、「捨てるという概念を捨てる」社会の実現に近づけるのではないでしょうか。

牛窪 恵(うしくぼ・めぐみ)
マーケティングライター、世代・トレンド評論家、インフィニティ代表

立教大学大学院(MBA)客員教授。同志社大学・ビッグデータ解析研究会メンバー。内閣府・経済財政諮問会議 政策コメンテーター。著書に『男が知らない「おひとりさま」マーケット』『独身王子に聞け!』(ともに日本経済新聞出版社)、『草食系男子「お嬢マン」が日本を変える』(講談社)、『恋愛しない若者たち』(ディスカヴァー21)ほか多数。これらを機に数々の流行語を広める。NHK総合『サタデーウオッチ9』ほか、テレビ番組のコメンテーターとしても活躍中。