積立投資なら買値にこだわる呪縛から解放される

とはいえ、投資のリターンは長期だって買値と売値の差ですから、高値づかみはしたくないと思うのは当然でしょう。そこで、買うタイミングも相場感も排除された毎月定額積立投資が、私たち生活者にとって最適な手段になるのです。相場の値動きは当てられない。ならば上がっている時は同じリズムで淡々と買い進み、下落相場では安く仕込めるチャンス時機と捉えます。相場の上下にかかわらず続けることで、購入価格はおのずと平準化されていきます。それゆえ買値にこだわる呪縛から解放されて、ゆったり気分で長期的経済成長がお金を育ててくれるのを待てるのであって、この心持ちこそが長期資産形成で将来の果実を大きく育てるための極意だと言えましょう。

繰り返し言いますが、投資タイミングは当てるのは難しい。だからそれを予想しない毎月積み立てで、コツコツちょっとずつお金を経済活動に働きに出していく。これならいつでも投資デビューに一歩を踏み出せるはずです。

口座開設が面倒な人は本気度が足りない

さて最後に、長期積立分散投資をちゃんと理解したのに、金融機関への口座開設の作業が面倒だからと、つい先延ばししちゃっているあなた。これって本を買って積ん読している人や、スポーツジムに入会したけれど忙しいとかいう理由をつけて通わない人などと同じことで、筆者もさまざまな反省を込めて「本気度が足りない!」と申し上げます。将来、自ら納得できる豊かな人生の実現を真剣に考えるならば、そうした手間は一歩の気合いで容易に解決できるはずです。思い立ったら即実行です。つべこべ言い訳せずに、まず一歩を踏み出しましょう。もはや古いフレーズではありますが、「長期積立投資はいつ始めたらいいですか?」「今でしょ!」

中野 晴啓(なかの・はるひろ)
セゾン投信 創業者

1963年生まれ。東京都出身。明治大学卒業。1987年、現在のクレディセゾンへ入社。セゾングループの金融子会社にて債券ポートフォリオを中心に資金運用業務に従事した後、投資顧問事業を立ち上げ、運用責任者としてグループ資金の運用のほか、外国籍投資信託をはじめとした海外契約資産等の運用アドバイスを手がける。その後、クレディセゾン インベストメント事業部長を経て、2006年にセゾン投信を設立。2023年6月に代表取締役を退任。セゾン文化財団理事。著書に『最新版 つみたてNISAはこの9本から選びなさい』(ダイヤモンド社)などがある。