「将来のために資産づくりを」と頭では考えているのに、コロナショックによる株価急落のときも、その後の相場の回復時も、ただただ動きを眺めるだけになっていた人はいませんか。セゾン投信の中野晴啓さんは、タイミングを考えすぎて投資の第一歩が踏み出せない人は多いと指摘します――。
米ドルコインと金融株式市場投資デジタル取引グラフ
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「貯蓄から投資へ」が加速

新型コロナウイルス感染は世界経済を揺るがす歴史的事象となって、日本でもまだ収束までの道のりは見通せないようです。私たちは渦中で、今だけでなく自らの将来についてもさまざま想いを巡らすことになりました。

2年前に「老後2000万円問題」で世間が沸いて、長寿社会を生きる私たち自身の将来不安に気付かされ、さらにこの1年コロナ禍を過ごすことによって、「貯蓄から投資へ」の政府メッセージを、将来の経済的不安解消の処方箋としてより現実的に受け止める人も増えたのではないでしょうか。

読者の皆さんもおのおのその必要性を痛感して、行政が導く「イデコ」「つみたてNISA」の両非課税制度を活用して、まっとうな投資信託を通じた「長期・積立・分散」の投資行動3原則を実践することの意義をしっかり学んでくださったことでしょう。

世界的に高値圏に上昇する中、広がる“いまさら感”

ところが、「必要性はちゃんと理解したけれど、まだ一歩が踏み出せていない」、という声が筆者にたくさん届くのです。コロナ禍が経済停滞を招いていると実感する一方で、日経平均株価が30年半ぶりに3万円を突破し、米国株式市場は史上最高値を更新するなど、世界全体に株価が高値圏に上昇する中、大きく値上がりする相場でいまさら始めるには乗り遅れてしまった、と感じている人も多いのではないでしょうか。

コロナショックとそこからの急回復をただ眺めていた人々

要するに、世界的な新型コロナウイルス感染拡大が始まった2020年2月から3月にかけて、コロナショックと呼ばれる世界の株価大暴落が起き、下落が始まってから1カ月足らずで急落相場は底をつけました。以後は今に至るまで総じて右肩上がりの急回復相場が継続中、という過去1年のマーケット動向を、彼ら彼女たちは問題意識に目覚めながらひたすら眺めてきたわけです。

スマートフォンで金融チャートを分析する若い金融専門家
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すなわち約1年前のマーケット急落局面では、どこまで下がり続けるかという恐怖でまったく行動することができず、やがて相場底入れ後の急回復が始まったなら、次に下がったところで始めよう、などと安易に考えているうちに、これまでの右肩上がり局面に乗ることができず、逡巡したまま今に至ったということです。

上がっているときも下がっているときも合理的に行動できない

実はこの1年間において、私たちは大変重要な実体験を得られたことになります。つまり多くの人は下がっているときも上がっているときも、相場に対峙してタイミングを見計らい合理的に行動することはなかなかできないものだということです。

将来に向けた資産形成は、決して相場で勝負を挑む行為ではありません。それは企業がもっと便利で楽しく豊かで幸せな社会を実現すべく、課題解決に根差したビジネスに必要資金を投入して、その事業成果(成長)からリターンの分配を受けてお金を育てていく行動であり、だからこそ長期投資になるのです。長期資産形成においては、お金が育つゴールはずっと先のこと。となれば、今の相場が高すぎるとか下がりそうなどといった目先の値動きは関係ないはずです。

積立投資なら買値にこだわる呪縛から解放される

とはいえ、投資のリターンは長期だって買値と売値の差ですから、高値づかみはしたくないと思うのは当然でしょう。そこで、買うタイミングも相場感も排除された毎月定額積立投資が、私たち生活者にとって最適な手段になるのです。相場の値動きは当てられない。ならば上がっている時は同じリズムで淡々と買い進み、下落相場では安く仕込めるチャンス時機と捉えます。相場の上下にかかわらず続けることで、購入価格はおのずと平準化されていきます。それゆえ買値にこだわる呪縛から解放されて、ゆったり気分で長期的経済成長がお金を育ててくれるのを待てるのであって、この心持ちこそが長期資産形成で将来の果実を大きく育てるための極意だと言えましょう。

繰り返し言いますが、投資タイミングは当てるのは難しい。だからそれを予想しない毎月積み立てで、コツコツちょっとずつお金を経済活動に働きに出していく。これならいつでも投資デビューに一歩を踏み出せるはずです。

口座開設が面倒な人は本気度が足りない

さて最後に、長期積立分散投資をちゃんと理解したのに、金融機関への口座開設の作業が面倒だからと、つい先延ばししちゃっているあなた。これって本を買って積ん読している人や、スポーツジムに入会したけれど忙しいとかいう理由をつけて通わない人などと同じことで、筆者もさまざまな反省を込めて「本気度が足りない!」と申し上げます。将来、自ら納得できる豊かな人生の実現を真剣に考えるならば、そうした手間は一歩の気合いで容易に解決できるはずです。思い立ったら即実行です。つべこべ言い訳せずに、まず一歩を踏み出しましょう。もはや古いフレーズではありますが、「長期積立投資はいつ始めたらいいですか?」「今でしょ!」