エキスパートになれなくてもいい。胸に響いた上司の一言
新規事業開発のチームは人数が少なく、自分も即戦力にならなければと思い、結果を残さなければという焦りから、一人でどんどんアポイントをとって営業に出るようになった。
そんなある日、杉浦さんは子どもの発熱で休まざるを得なくなり、急きょ当日にクライアントとのアポイントをキャンセルすることに。そこで上司に指摘されたことが胸に重く響いたという。
「先方も忙しい中で調整してくださった時間を無駄にしてしまったのは申し訳ないこと。誰かサポートをつけるなり、フォロー体制を作っておかなかったことを反省しました。私は子どもも小さくて休みがちな人間だということを自覚していなければいけなかったのに、自分が動くことを最優先に考えていたのです。その時に上司から言われたのは『組織を作れる人材になりなさい』ということでした」
この経験から本来のマネジメントとは何か、とあらためて考えるようになった。それまでは知識も行動も率先しなければ部下に認められないのではと不安だったが、自分に求められていたのはエキスパートになることではなく、「組織を作ること」。それが向いているのではないかと、上司に背を押されたという。
「それでいいんだと思えたら、少し肩の力が抜けました。現時点で何もできない、何も詳しくないことを後ろ向きに考えるのではなく、組織を作ることを得意とするキャリアもあるのかなと思えるようになったのです」
オンラインマネジメントを試行錯誤する日々
現在、杉浦さんが率いるのは、雑誌「CHINTAI」やオウンドメディア「CHINTAI情報局」の制作から営業までを一手に担うプランニング事業グループ。2020年2月に新設され、18人の新しい顔ぶれでスタートした。携わりたいと願って入社した「CHINTAI」の編集にやっとかかわれるようになったものの、コロナ禍で状況が一転。在宅勤務に切り替わったことで、部下の仕事を把握するのも厳しくなったのだ。オンラインでつながるメンバーと、いかにコミュニケーションを取るか。杉浦さんは一人一人と面談する時間をこまめにとって、フィードバックすることを心がけはじめた。
「社内で席にいれば、部下の様子も見えるし、何か困っていたらすぐに声をかけられます。でも、テレワークでは、いつどこで何が起こっているのかわからないので、ちょっとでも困ったときには迷わず連絡をもらえるように声がけしていこうと。私はすぐに電話しちゃうタイプだったけれど、LINE派、チャット派など、その人にとってハードルの低そうな連絡法でコミュニケーションを取るようにしています」
在宅勤務でも皆の声を集められるよう、日報、週報、朝礼や夕礼などの形も工夫した。