スピード昇進したいと孤軍奮闘するも空回った30代はじめ

配属先は、「情報審査室」。入居条件や物件情報を細かくチェックする業務に携わることに。希望とは全く異なる部署への異動に当時はショックを受けたそうだ。しかし、そこで挫けることはなく、思いがけずスイッチが入ったらしい。

「なぜか急に負けたくないという気持ちが湧いてきたんです。上司に認められたい、このメンバーの中で抜きん出て、誰よりも早く昇進していきたいと……」

入社以来、出向先で頑張ってきたけれど、本社にいた同期の仲間はすでに昇格していて、自分も追いつかなければと気負いがあったという杉浦さん。そんな思いもあり苦労もいとわず必死で仕事をこなしたが、なかなか昇格はできなかった。

「今となれば、当時の自分に何が足りなかったのかがわかるけれど、あの頃は何でダメなんだろうと焦るばかり。自分の目標を達成することだけに邁進してしまい、視野が狭かったなと思います」

孤軍奮闘しながらも、空回りしていた30代はじめのころ。杉浦さんは33歳で一子を出産し、育休明けに復帰したが、ますます気落ちしてしまう。育休中に後輩も昇格し、すっかり遅れをとっていた。ただ、そのような中でも上司から「ブランクなんて気にしなくていい」と言ってもらえたことで、仕事に奮起できたという。

周囲に支えられた育休明け。復帰の翌年、35歳で管理職に

それでも育休明けの時短勤務では時間調整が難しく、子どもが病気になる度に早退や欠勤が重なっていく。子育てとの両立に追われるなか、同僚との関わり方が変わっていった。

「それまでは絶対に頼らない、自分がいちばん量をこなすんだと思っていたけれど、頼らなければやっていけなくなって。そんな私を同僚たちもすごくサポートしてくれたのです。負けたくないという気負いがなくなり、チームへの愛着を感じるようになりました」

もともと要領が悪く、一つ一つ積み重ねていくのが自分のスタイルだったという杉浦さん。だからこそ周りと比べて焦った時期もあったが、仕事に対する自信がついていくなかで心に余裕ができた。そんな変化を見守ってくれた上司の応援もあり、復帰の翌年にはグループリーダーに昇格。35歳のときだった。

「まだまだ頑張らなきゃという気持ちが強くあったと思います。こんな私でも上司として認めてもらえるだろうかと不安があったので……」

チームをまとめる難しさを特に痛感したのは、対照的な考えをもつ社員の関係性をうまく取り持つことができなかったときだ。最終的には当人どうしが歩み寄って自然に和解したものの、自分の力不足を思い知らされる経験になった。