組織を蝕む同質性のリスク

ここまでおじさんおじさんと言ってきましたが、これは年齢や性別の問題ではなく、「変化に対応できない人」の総称でもあります。奇しくもコロナは、「テレワーク」「ニューノーマル」といった働き方や暮らし方に対応できるかどうかを通じて、「変化できる人」と「変化に対応できない人」を見分けるリトマス試験紙になりました。

今までも、ダイバーシティ推進、デジタル化、働き方改革など、様々な変化の波がやってきましたが、そのたびに日本の企業は小手先の対応にとどまり、なかなか根本的に変わらない。「みんなで渡れば怖くない」ではなく「みんなで渡らなければ怖くない」とばかりに変化を拒んできました。その中核にいる抵抗勢力、粘土層と呼ばれる人たちが「おじさん」なのです。

変化を拒む層は「同質性の塊」で、そのままでは様々なリスクをもたらします。同質性とは多様性の反対にあるもの。多様性がイノベーションの条件であることはよく知られていますが、私が講演で必ず言うのは「イノベーション以前の問題として、日本企業は同質性のリスクはとてつもなく大きい」ということです。

同質性が生み出す集団的浅慮の恐ろしさ

同質性の最大のリスクは「集団的浅慮」が起きることです。これは集団が個人の総和よりもレベルの低い意思決定をしてしまうことを意味し、社会心理学者のジャニス(1982)が提唱して以来、様々な研究やその防止策が研究され、論文になっています。ジャニスによると集団的浅慮の恐ろしい点は以下の8つです。

1.集団の実力の過大評価
2.不都合な悪い情報を入れない
3.内部からの批判や異議を許さない
4.他の集団をきちんと評価しない
5.疑問を持たないように「自己検閲」が働く
6.全員一致の幻想を持つ
7.逸脱する人を許さず、合意するように働きかける
8.集団内の規範を重視する

その結果、起きるのは企業の不祥事です。「データ改竄かいざん」「金融不正」などが良い例です。「バレないだろう」「このぐらい誰もがやっている」「今まで大丈夫だったんだから」と思ってしまうから不祥事が起きます。まさに「会社の常識は世間の非常識」です。スルガ銀行、東芝、アネハなど、いくらでも事例が思い浮かぶのではないでしょうか。