年齢を指定したリストラの嵐も
同じような話はいくらでもあります。テレワーク元年である2020年には、経営層も含めたミドルシニア・シニア社員の多くが、「仕事のリモート化」に苦労しました。「機械音痴でオンライン会議に入れないおじさん」「自分が使いこなせないからと言って、やっぱり会社で会議しようと提案するおじさん」など、枚挙にいとまがありません。
リモートで戸惑っているくらいならよいのですが、「年齢を指定したリストラの嵐」もきています。2018年にNECが45歳以上の社員を対象に3000人の「黒字リストラ」を発表するなど、コロナ前から大手企業もミドルシニア・シニア社員のリストラに着手していました。黒字でもリストラするのは、時代の変化に合わせて組織の新陳代謝を促し、「変わる力」を止めようとしてしまう人たちを切りたいからです。東京商工リサーチによると「2020年に早期・希望退職募集を開示した上場企業は93社にのぼった。募集社数は、リーマン・ショック直後の2009年(191社)に次ぐ高水準。前年の35社から2.6倍増と急増した」とあります。コロナ後は黒字ではなく「赤字リストラ」が5割以上ということです(※4)。
岐路に立たされる働かないおじさんと日本の雇用慣行
私は経営層とも話す機会がありますが、本音のところ、多くの経営層が政府に対して「解雇要件をゆるくして自由に社員を辞めさせられるようにして欲しい」と望んでいます。日本は海外と違い、解雇に厳しい。年功序列のメンバーシップ型雇用で、会社が人事権を握る代わりに、簡単に「明日からクビ」というわけにはいかないのが日本の雇用であり、「働かないおじさん」問題を生み出す原因でもあります。
個人としても企業としても、「変化を拒む」ことは「生き残れないこと」を意味します。今までは騙し騙し、なんとか引っ張ってきたものの、コロナで変化のスピードが加速しました。個人としても企業としても「変化すること」が突き付けられています。その中で岐路に立たされているのが、働かないおじさん問題に代表される日本の雇用慣行なのです。
[4]東京商工リサーチ「2020年上場企業の早期・希望退職93社 リーマン・ショック以降で09年に次ぐ高水準」2021年1月21日