日常的に利用したい移動手段、2位が自家用車

若者に限らず、withコロナの時代に多くの人が感じたのは、「見ず知らずの第三者とは極力、接触したくない」との思い。逆に、知らない人たちとほぼまったく接することなく目的が果たせるサービスは、一様に伸びを見せました。

一例が、非接触のキャッシュレスサービスやテレワーク、そしてオンラインでの購買など。

さらに自動車の場合、クルマという商材そのものが「非接触」に貢献するツールでもある。20年1月、自動車のサブスク事業に参入したホンダも、当初の販売店は埼玉県の1店舗だけでしたが、利用者が増えたため同12月現在、30店舗以上に増やしたとのこと。

KINTOが20年11月に実施した調査結果も、人気をハッキリ裏付けています。

たとえば、「コロナ禍で、日常的に利用したい移動手段は?」との問い。これに対し、3位以下を大きく引き離した回答が、1位の「徒歩」(83%)、そしてほぼ同率で2位の「自家用車」(80%)でした。

クルマは、電車やバスなど公共交通機関と違い、同乗者以外の人とほぼ接することなく目的地まで行ける手段。その室内空間は、コロナ禍での「安心感」につながるはずです。

先の調査では、自家用車を持たない人たちが「今後自家用車を、とても(まあ)保有したい」と答えた割合も、3割を超えました。前回調査(6月)では、「購入を検討するようになった」が全体でも約15%にとどまっていたこともあり、KINTOでは11月調査の傾向を、「感染防止意識の高まりから、パーソナルな空間を確保した移動を求めて、自家用車の保有意識が強まっているとみられる」と分析しています(同調査リリースより)。

走りや高級感より居心地重視はバブル崩壊以降の傾向

まさに、藁谷さんがコロナ禍で「驚くべき傾向が見られた」と言っていた、20年5月前後での、若い世代の新規契約者数の伸び(約2倍)も、一因は「クルマ=パーソナルな安心空間」とのニュアンスにあった可能性があります。

ここで思い出すのは、20年に販売を終了した、日産自動車のトールワゴン「キューブ (cube)」。このクルマが02年秋にモデルチェンジを図った際、キャッチコピーに掲げたのが「Cube. My room.(キューブ マイルーム)」です。

当時私も、キューブの開発者に取材しました。彼らはその時代の若者(おもに現30代後半~40代半ば)がクルマに求めるのは「走りより室内空間(My room)」だと言い切りました。バブルがはじけ、他人から一目置かれる「高級そうなクルマ(外見)」より、自分にとって快適な「居心地がいいクルマ(内面・内装)」を選ぶ時代になった、とのことでした。