理想的な壁打ち相手とは

もちろん私自身、企画を立てるにあたり、「壁打ち」を非常に大事にしています。会社員時代は必ず壁打ちの相手を確保していましたし、会社をやめてフリーになってからも、一緒に仕事をしているプランナーやリサーチャーなどに壁打ち相手を務めてもらっています。

女性
写真=iStock.com/metamorworks
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会社員であれば、壁打ちの相手は自分の隣に座っている同僚がいいでしょう。その人が自分と違う分野を担当していればなお理想的です。その人はこちらの仕事の内容をほとんど知らないから先入観を持っていない。でもマーケティングの知識もあるし、社内事情にも通じているから、共通言語で話ができるというわけです。

そこで、「いま、こんなこと考えてるんだけどね……」と構想中の企画を説明したり、プレゼンの予行練習を見てもらったりする。

無責任な発言が超重要

白紙の状態の人が説明を聞くと、「なんでそうなるわけ?」と自然に疑問がわく。それをぜんぶ口に出してもらうのです。

「ターゲットが30代の女性なんだよ」とこちらが言えば、

「なんで女性なの?」というように。

「それは、これこれこういう狙いがあって、女性に絞ったんだよ」

「そうなんだ。でもそれだったら男性は?」

と言われると、「本当に男性はこの商品を使わないんだろうか?」という考えがチラッと浮かぶ。これこそ壁打ちの狙いです。

このように思いがけないフィードバックを得ることで、自分のプランの弱点がわかりますし、「それ、やりたいのはわかるけど、話が飛んでない?」というように、論理の弱さを指摘してもらえることもある。

一人で立てた企画には客観的な視点が欠けることは多いし、思い込みや思考の癖なども出てしまうものです。そこを、「全然納得できないんだけど」とか、「最初から女性って決めてるけど、何か偏ってない? 俺だったら男性をターゲットにするね」というようにいい意味で無責任に発言してもらうことで、自分の考え方の癖や偏りを指摘してもらえる。これは非常にありがたいことです。