姿勢を変えるだけでも効果が
排便の姿勢を見直すだけで便秘が良くなることがあります。「便が出にくい」「残便感がある」という症状の人は効果が出やすいです。姿勢を見直すことはすぐに出来ることなので、多くの患者さんに説明しています。
排便時の姿勢を変えると、直腸と肛門が直線状になって、腹圧が伝わりやすくなります。直腸は、肛門の近くにあって、腸に巻き付いている筋肉(恥骨直腸筋)によって前方に引っ張られ、クの字型になっています。恥骨直腸筋が腸をお腹側に引っ張ることによって、普段は便が漏れないようになっています。
排便の時にいきむと、恥骨直腸筋が緩んで直腸が直線的になります。そして腹圧によって便が肛門から押し出されるのです。便を出しやすくするためには、腸がなるべく肛門に向かって直線的になることが望ましいです。
フランスの彫刻家、オーギュスト・ロダンが1902年に制作したブロンズ像「考える人」をご存知の人は多いのではないでしょうか。「考える人」の姿勢をとることで、直腸の角度が緩やかになり便が出やすくなります。正しい姿勢というと、背筋を伸ばすことを考えてしまいますが、トイレでは少しだらしない姿勢の方が便は出やすくなります。排便時はこの「考える人」の姿勢がお薦めです。
トイレに足台を置いてみる
排便姿勢を工夫する方法として、足台も有効です。20cmほどの高さの足台を便座の近くに置き、足を乗せます。この時、足はしっかりと足台の上に乗せて、踏ん張れるようにしましょう。つま先だけ乗るような狭い台や、バランスが不安定な台はよくありません。
足台を置くことで、膝の位置が高くなり足をお腹で抱えるような形になります。これによって「考える人」のポーズと同じように、腸が肛門に向かって直線的になり、恥骨直腸筋が緩みやすくなります。その結果、便が出やすくなるのです。
排便をスムーズにするための専用の足台が市販されています。最初に発売されたのが「スクワティポティ」という製品です。特殊な工夫があるわけではないのですが、便座に収まりやすいように、足台の形状がU字型になっています。
トイレ専用の足台を購入しなくても工夫して高さを持たせることはできます。まずはお風呂用の椅子などを使って試してみるのはいかがでしょうか。簡単なものなら100円ショップなどでも売っています。試してみてうまくいくようなら、専用の足台を買ってもよいかもしれません。
2001年3月京都府立医科大学卒業、同大外科入局。07年4月自治医科大学大学院入学、10年4月から9月南カリフォルニア大学大腸外科リサーチフェロー、11年3月自治医大大学院卒業。11年4月自治医大附属さいたま医療センター外科勤務。12年から辻仲病院柏の葉、17年から同病院便秘専門外来を担当。