便秘には野菜がいいとよく聞きますが、多くの患者を診てきた医師の前田孝文さんは「野菜なら何でもいいというわけではない」と便秘外来で指摘します。便秘に良い食べ物は何か、そして効果的なトイレの姿勢について解説します——。

※本稿は前田孝文『男の便秘、女の便秘』(医薬経済社)の一部を再編集したものです。

ハーブからの春サラダ
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ダイエットがきっかけになることも

若い女性によくあるのですが、ダイエットなどをして食事量が減ると腸が動きにくくなり、便秘になります。

便が出ないと、「食事を摂れば摂るほどお腹に溜まってしまって、お腹がポッコリ出てくるので食べたくない」「食べ過ぎると便が詰まって出なくならないか不安」と考える人もいます。食事による便秘悪化が心配なので、「食べない方が楽だ」という考え方です。

確かにその通りなのですが、食事を減らして便秘が悪化しなかったとしても、良くなることはありません。やはり食事はしっかりと摂ることが便秘治療のためには大事です。どんな食事をどのように摂ればよいかを考えましょう。

朝食が重要なワケ

もし食事の量を増やしたくないのであれば、朝食だけはしっかり摂りましょう。1日3食の中で、朝食が一番大事です。朝食後に大腸の大蠕動が一番起こりやすいからです。

大蠕動は腸が大きく動き、便を肛門の方へ押し出していく動きです。大蠕動は1日に何回かしか起こらないのですが、朝食を食べた後が一番起こりやすいのです。大蠕動が起こると、奥にあった便が肛門近くまで下りてきます。これによって便意を感じるので、そのタイミングでトイレに入る習慣をつけることがとても大事です。

朝食をしっかり摂るためには、朝きちんと起きて余裕を持って行動することが大事になります。そのためには夜も十分に睡眠をとる必要があります。このようにゆったりと朝を過ごすこと、夜に十分寝ることは、腸の動きを調節する自律神経をリラックスさせるためにも重要です。

生活のリズムを整えリラックスすること、朝食をしっかりと食べて大蠕動を促すこと、さらには食後にトイレへ入る時間の余裕を作ること、これらはとても大事です。しっかりと生活のリズムを作らないと実行できませんが、最も大事です。

和食の朝食
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便秘にサラダは無意味だった

便秘外来を受診する患者さんの多くは、食物繊維が便秘に良いと知っています。そして実際に食物繊維を摂ろうと努力しています。しかし、どんな食事をしているか尋ねてみると、野菜サラダなどの生野菜をたくさん摂っている人が多いことに気づきます。これは便秘の治療という点では効果がありません。

前田孝文『男の便秘、女の便秘』(医薬経済社)
前田孝文『男の便秘、女の便秘』(医薬経済社)

「便秘といえば食物繊維」=「野菜をたくさん」=「レタスやキャベツなど葉物野菜」=「サラダ」とイメージされている方が多いと思います。実は便秘の解消に葉物野菜はあまり役に立ちません。なぜなら便秘解消に役立つ食物繊維は、腸内細菌の活動を活発化させる水溶性食物繊維であり、レタスなどの葉物野菜にはあまり含まれていないからです。

葉物野菜には不溶性食物繊維が多く含まれます。野菜のスジなどはまさに不溶性です。確かに不溶性食物繊維を多く摂ると便の量が増え、便の形がしっかりします。大腸の動きが正常の人はこれで便秘は良くなります。

しかし、多くの人は大腸の動きが弱いタイプの便秘です。不溶性食物繊維を多く摂ると便は増えますが、大腸の動きは良くないので、余計に便が詰まってしまいます。食物繊維を摂っても便秘が良くならない理由の一つは、摂っている食物繊維の種類を誤っていることです。

不溶性食物繊維ではなく、水溶性食物繊維を多く摂ることが必要になります。

便秘の人が取るべき食べ物

水溶性食物繊維は便の形を作るのではなく腸内細菌の栄養になっています。善玉菌が元気になると、体に良い様々な有機酸(酪酸や乳酸、プロピオン酸)が作られて、腸の動きが良くなるのです。これらの有機酸が大腸を動かすエネルギーとなり、腸の蠕動運動が良くなって便秘が改善します。ほとんどの野菜は不溶性食物繊維の方が水溶性食物繊維よりも多く含まれています。ですから食物繊維を摂ろうと意識するときは、水溶性食物繊維を多く摂るよう意識することが大事です。

水溶性食物繊維を多く含むのは、らっきょうやにんにく、ごぼうなどの根菜類やワカメなどの海藻類です。また、リンゴやキウイフルーツ、プルーンなどの果物も水溶性食物繊維が豊富で、便秘解消に役立ちます。

姿勢を変えるだけでも効果が

排便の姿勢を見直すだけで便秘が良くなることがあります。「便が出にくい」「残便感がある」という症状の人は効果が出やすいです。姿勢を見直すことはすぐに出来ることなので、多くの患者さんに説明しています。

排便時の姿勢を変えると、直腸と肛門が直線状になって、腹圧が伝わりやすくなります。直腸は、肛門の近くにあって、腸に巻き付いている筋肉(恥骨直腸筋)によって前方に引っ張られ、クの字型になっています。恥骨直腸筋が腸をお腹側に引っ張ることによって、普段は便が漏れないようになっています。

『男の便秘、女の便秘』より
男の便秘、女の便秘』より(イラスト=安良岡和美)

排便の時にいきむと、恥骨直腸筋が緩んで直腸が直線的になります。そして腹圧によって便が肛門から押し出されるのです。便を出しやすくするためには、腸がなるべく肛門に向かって直線的になることが望ましいです。

フランスの彫刻家、オーギュスト・ロダンが1902年に制作したブロンズ像「考える人」をご存知の人は多いのではないでしょうか。「考える人」の姿勢をとることで、直腸の角度が緩やかになり便が出やすくなります。正しい姿勢というと、背筋を伸ばすことを考えてしまいますが、トイレでは少しだらしない姿勢の方が便は出やすくなります。排便時はこの「考える人」の姿勢がお薦めです。

トイレに足台を置いてみる

排便姿勢を工夫する方法として、足台も有効です。20cmほどの高さの足台を便座の近くに置き、足を乗せます。この時、足はしっかりと足台の上に乗せて、踏ん張れるようにしましょう。つま先だけ乗るような狭い台や、バランスが不安定な台はよくありません。

足台を置くことで、膝の位置が高くなり足をお腹で抱えるような形になります。これによって「考える人」のポーズと同じように、腸が肛門に向かって直線的になり、恥骨直腸筋が緩みやすくなります。その結果、便が出やすくなるのです。

排便をスムーズにするための専用の足台が市販されています。最初に発売されたのが「スクワティポティ」という製品です。特殊な工夫があるわけではないのですが、便座に収まりやすいように、足台の形状がU字型になっています。

トイレ専用の足台を購入しなくても工夫して高さを持たせることはできます。まずはお風呂用の椅子などを使って試してみるのはいかがでしょうか。簡単なものなら100円ショップなどでも売っています。試してみてうまくいくようなら、専用の足台を買ってもよいかもしれません。