市販の便秘薬が治療を困難にしている

女性で治療がうまくいかない人は、若い頃から自力での対処を頑張ってきた人が多いです。

女性は女性ホルモンが活発に作られるようになる10歳代から、便秘になる人が増えていきます。後で説明しますが、女性ホルモンと便秘は密接な関係があります。

それに加えて、学校生活の中でトイレを我慢する、ダイエット目的で食事の量を減らす、スカートなど体を冷やすような服装で過ごして自律神経の働きが乱れるなど、女性は若い頃から便秘になりやすい環境に身を置くことが多いです。

便が出にくくなった時にどのように対処するかが問題です。効果はすぐには現れませんが、食事や運動、睡眠といった生活習慣を見直すことが一番大事です。普段の生活にもう少しゆとりを持って便秘に向き合うことができれば、女性の便秘はずっと良くなると思いますが、現実はそう簡単にはいきません。日常生活には、学校や仕事、育児など、便秘治療の制約になってしまうことがたくさんあります。自分の好きな時間に好きなだけトイレに行くことは容易ではありませんし、便秘以外にも考えないといけないことがたくさんあります。

「生活習慣を見直すのが良いのは分かっているけど、食事や運動に気を遣う余裕はあまりない。だけどお腹の不愉快な症状はある。今すぐなんとかしたい……」。こう思った時、今ある便秘をできるだけ早く治すのに便秘薬は最高の治療です。日本では、便秘治療に即効性のある「刺激性下剤」が、街のドラッグストアで簡単に買えます。

薬やカプセル
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薬の「耐性」が治療を遠ざける

刺激性下剤は、薬の成分で大腸の動きを刺激して動かします。この効果は強力です。夜に飲んだら翌朝にはすっきりと爽快感を持って排便できます。これを味わってしまうと、生活習慣を見直して便秘を治していこうという地道な努力を続けるのが余計に難しくなってしまいます。

しかし、大きな問題が一つあります。刺激性下剤は使い続けていると体が慣れてしまうのです。最初は2錠で十分だったのが段々と効果が薄れていき、2錠が3錠、4錠……と飲む量が増えていくのです。

このように薬の効果がなくなっていくことを、「耐性がつく」といいます。

刺激性下剤によって、腸に強制的に刺激を与え続けていると、大腸を動かす神経が影響を受けます。大腸の周りの神経が減るという報告もあります。どれくらいの期間刺激性下剤を使うと耐性がつくかはっきりしないのですが、数カ月の服用で耐性がつくこともあるようです。

ただ、一度耐性がついたとしても、刺激性下剤を止めると徐々に元通りになっていきます。しかし、極度の耐性がついてしまった場合は、本当に元に戻るかは分かっていません。

また、刺激性下剤を長年使っていた人が、完全にやめることは簡単ではありません。便秘外来には市販のコーラックを一度に60錠も飲んでしまう人が何人も受診しています。これほど大量の刺激性下剤を飲んでいてもその効果が出ない状態となると、他の薬を使っても治療は非常に難しいです。