自筆証書遺言が手軽に、安心になった

幸い、遺言は書きやすくなっている。自筆証書遺言は費用も掛からず、いつでも作成できる手軽さがある一方で、財産目録を含めてすべて自筆しなければならないのが難点だった。2019年1月からは財産目録の部分はパソコンなどで作成できるようになった。

また、自筆証書遺言の場合、紛失したり偽造されたりする恐れがあったが、2020年7月からは法務局で保管してくれる制度がスタートし、安心感も増した。

法的効力はないが、簡単に自分の意志を文字にできるサービスもある。LINEの「タイムカプセル」は、質問に答えるだけで遺言の文面を作成できる。あるいは残された家族に伝えたいことを記録しておくスマートフォンアプリもある。写真や音声での記録もできるから、体力や気力の衰えた親世代でも簡単に利用できるかもしれない。

実家暮らしの親と会う機会が貴重になっているいま、その時間を大事に使うためにも、会ったときにどんな話をするか、事前に考えて準備をしておきたい。

文=向山 勇

井口 麻里子(いぐち・まりこ)
税理士

辻・本郷税理士法人所属。メガバンクのプライベートバンキング部門への出向経験を持ち、富裕層から一般層までさまざまな相続のケースを手掛ける。現在は同社の相続部にて相続のスペシャリストとして活動。井口麻里子のブログ