帰省した際に「財産の一覧表」を一緒に作ろう

「相続が発生してから慌てないためには、親御さんに財産の一覧表を作ってもらうのがいいですね」

とはいえ、お願いしただけでは、なかなか作ってもらえない。高齢になると、文字を書くのさえ、おっくうになってしまっているからだ。親と会ったときに、一緒に作るのがいいという。

形式にこだわる必要はなく、金融資産であれば、どこの銀行や証券会社に口座があるかを一覧にしていけばいい。ネット銀行やネット証券を利用している場合には、IDやパスワードがわかるようにしておいてもらうことも大事だ。

ノートパソコンの使い方を学ぶシニア男性
写真=iStock.com/SetsukoN
※写真はイメージです

「IDやパスワードがわからないために、親のパソコンを業者に持ち込んで解析してもらったケースもあります」

また、相続が発生した後に自宅の敷地の境界線を巡って隣家とトラブルが発生することがある。境界線ははっきりしているか、もめ事になる可能性はないかなども確認しておきたい。

葬儀やお墓の希望についても確認しておこう

葬儀やお墓の希望について確認しておくことも大事だ。最近は、お墓も多様化し樹木葬や海洋散骨など、さまざまなスタイルが用意されている。「富士山の見える場所で樹木葬にしてほしい」などの希望を持つ親もいるだろう。

葬儀やお墓をどうしたいのか、親の希望がわかっていれば子どもも迷わずにすむ。

「親御さんの希望がわかれば、ドライブを兼ねて一緒に墓地の見学にいくこともできます」

両親がペットを飼っているケースも増えている。万が一の時にペットを誰に託したいのか、そんなところから終活を始めてもいいだろう。そのときに大事なのは、聞くだけではなくノートなどに書いて文字にしておいてもらうことだという。

「私の母が亡くなった際に、それが大事であることを実感しました。何も書き残していなかったので、お葬式やお墓の希望もわからず、通り一遍のものになってしまい、家族としてとても残念でした」

生前に井口さんから母親に「希望を書いておこうよ」と勧めたが、「字を書くのが面倒くさい」「よく目が見えないから……」とそのままになってしまったという。年齢や病気で、親が遺言などを書く気力を急速に失ってしまうことも多い。

親がこの先の人生をどうしたいのか、最期をどう迎えたいのかじっくり耳を傾け、できることは手助けをする。その一環として財産の一覧表も作ってもらうのが理想だろう。