親に遺言を書いてほしければ、まず、自分が書いてみる
葬儀やお墓の希望を確認して、財産の一覧表ができたら、次のステップとして遺言書まで書いてもらえれば、相続の際も安心だ。遺言書がない場合は、遺産分割協議で相続人同士が話し合い、誰がどの財産を引き継ぐかを決める。
きょうだいとはいえ、家庭を持っていればさまざまな事情を抱えている。財産の額がそれほど多くなくても、きょうだいなどが争うケースは珍しくない。裁判所の司法統計(2019年度)によると、遺産分割を巡る争いのうち、遺産額が1000万円以下のケースが約3割を占めている。
遺言書があれば、こうしたもめ事を回避できる。遺産分割協議は必要なく、遺言書の通りに遺産分割をすることになるし、親が決めたことなら子どもも納得しやすい。
ただ、子どもから親に「遺言書を書いてほしい」と頼みにくいのも現実だ。
「まずは、お子さんが自分で遺言を書いてみて、その後で親御さんに勧めるのがいいと思いますよ」
遺言を書く適齢期が55歳のワケ
井口さんは、「55歳になったら遺言を書く」ことを推奨している。自分が55歳くらいになるころ、親はだんだん弱ってくる。60代になると、親の世話が本格的に始まり、自分のことを考えている余裕がなくなるかもしれない。だから、まだ余裕のある50代に、一度遺言を書いてみた方がいいというわけだ。
「遺言は何度でも書き直すことができます。一度書いておけば、書き直すのも簡単ですが、70代や80代になってからはじめて書くのはハードルが高いものです」
つまり、50代で遺言を書くのは、自分自身のためでもあるわけだ。加えて「私も子どものために遺言を書いたら、意外と簡単だったよ。お母さんも一緒に作ってみようよ」と言えば、拒否反応を示す親も少ないはずだ。