大量のプリントを授業の代替に

すぐにでも子どもたちとオンラインでつながりたい気持ちがありましたが、私は研究主任なので、まずは校内の教員同士をオンラインでつないでZoomの研修を進めました。先生同士でZoomの使い方を練習したわけです。それまでは「オンラインでつなぐなんて難しくて無理だ」という雰囲気だったのが、みんな、実際やってみると簡単だということが体験からわかりました。

オンラインでインタビューに答える庄子寛之さん
オンラインでインタビューに答える庄子寛之さん

とはいえ、当時の世論はまだ、「子どもの学びをどうするか」よりも、「(保護者の)仕事をどうテレワークに移行させるか」や「親が仕事を休めない家庭の子どもの預け先をどうするか」という議論の方が多かったように思います。

当初、春休みが終わるまでとされていた一斉休校でしたが、感染の拡大は収まらず、4月に入っても休校が続くことになりました。4月7日には東京都や大阪府などに緊急事態宣言が出され、16日には対象地域が全国に拡大。少なくともゴールデンウィークまでは休校することが明らかになりました(最終的に、私の学校が再開されたのは6月に入ってからでした)。

4月初めの段階でオンライン授業を行うことができたのはごく限られた学校だったと思います。ほとんどの学校では、家庭学習の時間割を作り、プリントを大量配布して授業を補完することになりました。

「勉強は苦行」と刷り込むことになってしまう!

しかし、その内容は新学年の全く習ったことのない単元です。

教える人がいない中で、自分で学習できる子ばかりではありません。保護者の負担も大きい。テレワークで在宅していても仕事をしているわけですから、子どもの学習をつきっきりで見ることはできないと思います。ただでさえコロナでストレスが増大している家庭に、もう一つ大きなストレスを加えることになる。社会問題として虐待の増加も心配されていました。

学力が高い子は塾でオンライン学習をしていますから、「なんで学校の課題をわざわざやらなきゃいけないんだ」という気持ちにもなるでしょう。「勉強=プリントの課題の答えを教科書から見つけて写すこと」になってしまう。これは、勉強が苦行であることを刷り込むことにしかなりません。

「『学ぶことはそもそも楽しいんだ』と伝えるのが教員の仕事なのに」と葛藤しました。多くの教員が「これでは子どもに学ぶ楽しさは伝えられない」「このままではいけない」という思いを抱えていたはずです。

今思えば、そこから動きが加速したのかもしれません。「なんとかしてオンラインで授業ができるように進めなければならない」という思いを持つ教員が増えていきました。オンラインを使えば、双方向のコミュニケーションができるからです。