Q.BT革命は「人間の終わり」をもたらすのですか?

A.すでに「人間の終わり」は始まっています

「人間の終わり」というと、人類が絶滅してしまうようなイメージを持つかもしれませんが、そうではありません。現在、BT(生命工学)の進展によって、簡単にゲノム(生物種にとって必要な遺伝子の1セット)を編集し、遺伝子を改変できるようになりつつあります。

人間を人間たらしめているのは、共通のゲノムを持っているからです。そのゲノムを改変すれば、当然、いままでの「人間」ではなくなるので、「人間の終わり」になります

たとえば遺伝子を組み換えることで、知的能力や運動能力、身体構造を変えることも考えられます。重篤な病気になりづらいようにすることもできます。

そういった人間の遺伝子を改変することへの批判はありますが、その根拠は技術的なリスクしかありません。逆にいえば、技術的な安全性が確立されれば、人が自分の意志で遺伝子を組み換えることを止めることは難しいでしょう。

実際、安全性が保証され、それなりに安価な金額で、自分や子どもの能力を改変できる技術が確立されれば、少なからぬ人が使ってみたいと考えるはずです。だとすれば、BTが「人間の終わり」をもたらすのは時間の問題であり、すでに人類はその一歩を踏み出しているともいえるのです。

▼ニーチェの「神は死んだ」フーコーの「人間の終わり」とは
ニーチェの有名な「神は死んだ」という言葉は、人間が神を殺した、すなわち人間がもはや神という概念を必要としなくなったという含意があります。この「神の死」を前提に、フーコーは「人間の終わり」という考えを提出しました。ここでいう「人間」とはあくまでも、理性を用いて自律的に行動できる近代的な人間像のことです。フーコーが1960年代に予言的に語ったことはいま、BTによって現実になりつつあります。