肯定的な観点で投資先を決める点が特徴
それ以前にもSRI(社会的責任)投資という似た概念がありました。SRIが、タバコ事業は有害なので外すというように、ネガティブな要素を見つけて投資先から外していくことから始まったのに対し、ESG投資は、長期的にリスクを下げられるという肯定的な観点で投資先を決める点が特徴的です(ESGでもネガティブ面でスクリーニングすることはあります)。
これは投資の基本は投資した金額に対して、リターンがなければならないという考え方にも合致しています。ESGに配慮している企業は長期的に見てリスクが少ない、つまりリターンにもつながるからです。
米国のカリフォルニア州職員退職年金基金(CalPERS)など欧米の主要公的年金は、06年時点ですでにPRIに署名していますが、15年に世界最大の年金基金である日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がPRIに署名したことで、一気に日本の金融業界の関心事となりました。国内でのESG企業への投資金額は16~18年の2年間で7倍の2兆米ドルになっているものの、欧州の7分の1、米国の6分の1で、まだまだ伸び代があります。
折しも気候変動による異常気象や、新型コロナウイルス感染症のまん延などの災厄が相次いで、気候変動や、従業員の健康への配慮は企業の当然の義務になっています。女性活躍、働き方改革、コンプライアンスに対する意識も高まっています。国連が言うからESGに配慮するというより、ESGに配慮していない企業はより切実に、生き残れなくなるという危機意識が、投資家側でも企業の側でも共有されてきているのです。
ESGに配慮しているかどうかのひとつの手がかりは、企業サイトの開示情報です。日本企業はアピールが苦手で完璧にできていることしか開示しない傾向があるといわれてきましたが、特に気候変動対策を中心に、最近は充実してきています。
開示情報を見るポイントは、ESGへの取り組みをアリバイ的に示すのではなく、企業戦略とESGと財務の話を「統合情報」として一体化して説明できているかどうかです。株主にはお金の話、一般消費者にはESGへの取り組みと分けているならあまり評価できません。