ESG投資の意義はますます高まっている

業界によってどの部分を強調して見るべきなのかは異なります。個々の企業について、経営理念と事業との結びつけ方やサステナビリティへの貢献意欲を調べ、ESGに配慮しているのかを見比べるのはおもしろいプロセスですが、個人ではそこまで目配りができないかもしれません。そこで、ESGにどのくらい配慮しているかを客観的に測る「指標」を参照するのも手です。さまざまなESG調査機関がありますが、MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数や、FTSEラッセル・ESGレーティングズなどの大手調査機関の指標を参考にするところから始めるのがわかりやすいでしょう。

ESG投資のリターンについては、さまざまな調査により、長期で見ればリターンが出ているというのが大方の見方です。ただし、企業の業績はさまざまな要因で変動するので、ESGに配慮している企業の業績がよくても、それがESGによるものか、別の要因によるものかが判別し難いところです。ただ、今コロナ禍で世界中の社会・経済が大きな混乱をきたしています。社会の変化に耐えられるよう、日頃から多様な人材を集めて、さまざまな新しいアイデアを出して対応していけるような企業が生き残っていくでしょう。その意味では長期でリスクを減らしサステナブルであるというESG投資の意義はますます高まっているのです。

ESGに関わるテーマは至るところにあります。地域に還元できるような新しい技術を開発して使っている、女性活躍が進んでいるなど、自分の立場や気になるテーマから、企業のESGへの取り組みを調べるのもおすすめです。

構成=奥田由意 写真=iStock.com

村上 芽(むらかみ・めぐむ)
日本総合研究所創発戦略センターシニアマネジャー

京都大学法学部卒業。日本興業銀行を経て、2003年に日本総研入社。10年より創発戦略センター所属。企業のESG評価、環境と金融が専門。子どもの参加論にも傾注。著書に『投資家と企業のためのESG読本』『SDGs入門』など。