④絶対したくないことは何か

とはいえ、望みを聞かれても、なかなか出てこないこともあります。そういうときは、まず絶対にしたくないことは何かを問いかけてみてください。

絶対にしたくないことがわかったら、それはやらない方向で一日の行動を決めましょう。そうするうちに気づきが得られて、最後にしたいことが見えてきます。

会社員の人に絶対にしたくないことを聞くと、「絶対に残業はしたくない」という答えが返ってくることが多いですね。そうすると「残業は今日はやらない」という方向で進めると、1日が変わってきます。残業をしなければ仕事後に、習い事をしよう、買い物をしよう……と、何かしたいことが出てくるでしょう。

「通勤に1時間以上かけたくない」というのもよくある答え。そうすると今後は、もう少し通いやすいところに引っ越そうといった計画も出てきます。

やりたくないことがわかると、具体的に行動しやすくなるのです。

⑤わがままを出せているか?

自己肯定感の低いときは「困っている人を助けたい」「もっとやさしく対応してあげたい」という思いが強すぎて、自己犠牲が多くなりがちです。

自己犠牲が当たり前になると、自分の望んでいることを他の人に譲ってしまったり、自分の望んでいないことを引き受けてしまったりすることがあります。

たとえば、この日に有給をとりたかったけど、他の人とかぶったから譲るとか、自分の仕事が手一杯なのに、頼まれたから引き受けてしまうといったこと。

自分の希望を前に出すと、わがままと思われるんじゃないか、自分がそうすると誰かが不幸になるんじゃないか、そういった思い込みが強くなっているのです。

でも自己犠牲を続けていると結果的に、自分の仕事が遅れて周りに迷惑がかかったり、八方美人ととらえられて人間関係がギクシャクしたり、そういったマイナス面も起こります。ですから、わがままを出せているかどうか自分に尋ねて、出せていなければ小さなわがままから言っていきましょう。

たとえば仕事中なら「そこの書類をとってください」「この荷物を持ってもらえませんか」と周りに頼む。誰かとランチに行ったら「今日はこれが食べたいです」「和食にしましょう」と主張してみる。

そういったわがままが出せていることを自分が確認できれば、自己肯定感アップにつながるはずです。

たいてい悩んで自己肯定感が低くなっているときは、自分に向けている意識が「0」になっていますが、自分に質問することで、それが「1」になります。自分への質問は自分に意識を向けることのできる、とても価値のある行動であると知っておいてほしいですね。

構成=池田純子

井上 智介(いのうえ・ともすけ)
産業医・精神科医

産業医・精神科医・健診医として活動中。産業医としては毎月30社以上を訪問し、精神科医としては外来でうつ病をはじめとする精神疾患の治療にあたっている。ブログやTwitterでも積極的に情報発信している。「プレジデントオンライン」で連載中。