お金持ちになる人の習慣② 「検討します」と言わない

私は以前、営業をやっていた頃にはお客様にさまざまな金融商品の提案に行くことがありました。そんな場合、お金持ちの人の特徴はなんといっても“決断が早い”ということです。「しばらく考えたい」とか「検討します」という返事はまずありません〔もっとも“検討します”というのは多くの場合、断り文句でしたが(笑)〕。

なぜ彼らは決断が早いのか。その理由は二つあります。まず一つ目は、彼らが日々数え切れないぐらいの判断を迫られる日々を過ごしているからです。サラリーマンの場合、判断するのは大概、上の人がやります。ただ、上も自分の責任をヘッジするためにその上に判断を仰ぎます。こうして会社組織の中ではヘッジでがんじがらめになるまで結論が出ないため、物事の決定に時間がかかるのです。ところがオーナー経営者は全ての決定権限と責任は自分に集中します。当然日々の仕事の中で次から次へと判断を求められることになるため、何事においてもすぐに決断せざるを得ないのです。

もちろん下した判断が必ずしも正しいとは限りません。でも間違った判断を下したということがわかると、すぐにそれを覆す、その決断も早いのです。結果的に判断のスピードを早くせざるを得ないという習慣になっていくというわけです。

頭が良い人=失敗を活かせる人

お金持ちが決断を下すのが早い二つ目の理由を説明します。早く決断できる人というのはわかりやすく言えば、“頭が良い人”なのです。ここで言う頭の良い人とは学校の成績が良かった人でもありませんし、ましてや高学歴の人というわけでもありません。頭の回転の速い人、センスの良い人と言い換えてもいいでしょう。こういう人は必ずしも元々頭が良かった人であるとは限りません。今までに自分がやった失敗を忘れず、次に判断する時に生かそうとしていくうちに正しい判断を素早くできるようになっていったという人が多いのです。

では、決断が早いとなぜ良いのでしょう? それは儲けるチャンスを失わずに済むからです。竹内まりやさんの歌の文句に「チャンスの神様は前髪しかないから、通り過ぎたら手に入れることは無理よ」というのがありますが、まさにこの通りなのです。飛びついたものが失敗しても、失敗したとわかった時点で早く止めれば被害は少なくて済みますが、乗り遅れた場合はその後になかなか乗ることができません。決断が早いというのはいずれの場合でもメリットをもたらしてくれるのです。

お金持ちになる人の習慣③ 部屋や机がきれい

これについては「ええ! そうなの?」と思うかもしれませんが、不思議とこれは事実です。でもなぜ、そうなのかを論理的に説明することはできません。ただ、昨今、断捨離がブームであり、これによるメリットはとても大きいと言われていますね。特によく言われているのは断捨離をすることで物の価値を見極めるようになり、無駄な買い物をすることが少なくなるのでお金が貯まるということです。

まあ、それはその通りかもしれませんが、そういう細かい話ではなく、もう少し本質的に整理整頓をすることが仕事に与えるメリットは大きいような気がしているのです。思うに身の回りに余計なもの、必要のないものを置いておかないようにすることで、気持ちがすっきりしますから、思索に耽ったり、考えて判断したりする作業がスムーズになるからではないかと思うのです。

これは私自身も独立して仕事を始めてから机の上をきれいにするように心がけることで、思考の整理ができるようになり、それまで以上により深く考えることができるようになりました。余分なものを周りに置かないことによって、②で指摘したような「早い決断」ができることに影響しているようにも思います。

今回お話したのは自営業やフリーランスの人が本業で稼いでお金持ちになるために必要な習慣と行動ということでお話しましたが、サラリーマンのそれは、かなり異なります。次回はそんなサラリーマンにとってお金持ちになれる人の特徴をお話したいと思います。

大江 英樹(おおえ・ひでき)
経済コラムニスト

大手証券会社に定年まで勤務した後、2012年に独立し、オフィス・リベルタスを設立し、代表に。資産運用やライフプランニング、行動経済学などに関する講演・研修・執筆活動などを行っている。近著に『定年前、しなくていい5つのこと』(光文社新書)など。