心理学の研究から、国によって笑顔が与える印象が大きくちがうことがわかっています。心理学者の内藤誼人さんは、「日本の職場では笑顔でいると知性がない、自信がないという印象をあたえてしまうリスクがある」と指摘。では、どのように笑顔をコントロールしていけばいいのでしょうか。
2人のビジネスパーソン
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いつも陽気に明るくという風潮に従わなくていい

いつでもにこやかに、陽気にポジティブに振る舞わなければならない、という社会的な風潮があります。笑わない男性はというと、あまり人気がありません。

たしかに、接客業などで働くのであれば、愛想の良さが大切ですけれども、そうでないのであれば、男性はムリに笑顔のトレーニングなどをしなくてもよいかもしれません。

女性上司からすれば、愛想のない男性部下に対して、「もっと愛想よくしたほうがいいんじゃない?」とアドバイスしたくもなるかもしれませんが、それを求めるのはやめましょう。どうせ、ぎこちなくて、不自然な笑顔しか作れませんから。

「男は三年に方頬」という言葉をご存じでしょうか。

男性は、いつもニコニコしていると、かえって威厳が損なわれてしまうので、三年に一回だけ、それもほんの少し方頬が動く程度の笑いをすれば十分だよ、という意味です。今では、あまり使われていない言葉だとは思うのですが、これは心理学的にも正しいことがわかっています。

男女でここまで違う「笑顔」が与える印象

米国ニューヨーク州にあるヴァッサー大学のアミー・ハルバースタットは、15の雑誌に掲載されている男女の広告モデルについて分析してみたことがあります。それぞれのモデルはいろいろな表情を見せているわけですが、それらの表情がどんな印象を与えるのか、20名の判定員に、得点をつけてもらったのです。

その結果、女性モデルでは、笑顔を見せているほど好印象でしたが、男性モデルでは逆になることがわかりました。男性モデルでは、笑って「いない」ときのほうが、強そうなイメージ、男らしいイメージを与えることが判明したのです。

にこやかな笑顔の男性は、たしかに女性にモテるのかもしれませんが、仕事ができるというイメージは与えません。どちらかというと、ヘラヘラしていて、重みを感じさせないためです。

その点、笑顔を見せない男性のほうが、どっしりと構えていて、感情的に落ち着いていて、風格が漂っているような印象を与えます。仕事に役立つのは、こういうイメージでしょう。