深刻化する日本の人口の減少。その原因は、共働き世帯の子育てのしにくさがひとつと言えます。男性の育休取得の「義務化」を目指す小室淑恵さんに、日本の男性育休の現状を教えてもらいます。

※本稿は、小室淑恵、天野妙『男性の育休』(PHP新書)の一部を再編集したものです。

男性がモップを持って立っている
※写真はイメージです(写真=iStock.com/bee32)

母親を産後うつへと追い込んでしまう夜中の育児

産後一年までに死亡した妊産婦の死因で最も多いのが「自殺」です(出産後の自殺九二人、次いでがん七五人、心疾患二八人、出血二三人。二〇一五~一六年)。その要因と言われているのが、「産後うつ」ですが、産後うつの発症リスクは、産後二週間~一カ月がピークです。うつを防ぐには「十分な睡眠をとれる」ことと「朝日を浴びて散歩」ができるような環境により、体内に「セロトニン」というホルモンを増やすことが重要ですが、この二つこそが、産後の女性にとっては一番難しいことです。二時間おきの授乳や夜泣き対応があり、赤ちゃんはしばらく外気にあてられないので、薄暗い部屋でたった一人、赤ちゃんが息をしているかどうかを確かめながら過ごす日々は、母親を産後うつや自殺へと追い込んでしまうのです。

この時期に、まずはたった二週間から一カ月でもいいですから、夫が育休を取って夜中の育児を一緒に支えて、妻が休める時間を作ることで、妻の命を救うことになるのです。

私自身も二〇〇六年に長男を出産した際、夫の平均帰宅時間は深夜二時で、ともに両親が遠方に住んでいたため本当に追い込まれてしまいました。子どもが泣き出すと「このまま腕の中で死んでしまうのではないか。そうなったら、全て自分の責任なんだ」と、一緒に泣き続けたのを覚えています。今思えば、あの時は産後うつの入り口にいたわけです。そしてやっと深く寝てくれて、ベッドに赤ちゃんを置いた瞬間に、まるで見ていたかのようなタイミングで大きな物音を立てて帰ってきて赤ちゃんを起こしてしまう夫に「二度と帰ってこなくていいから!」と言って大喧嘩したものです。