各国の「セーフティネット」整備の動き
日本政府は、フリーランスが業務委託契約などで不利益を被らないようにする独禁法など経済法を周知するガイドライン策定することにしている。また、取引条件を明記した書面の交付を資本金1000万円以下の企業にも義務付ける下請代金支払遅延等防止法の改正、現在一部のフリーランスの職種のみ加入できる労災保険の特別加入の対象拡大を検討することにしている。
また、フリーランスの保護する動きは欧米でも進んでいる。EU理事会は2019年11月8日、「労働者と自営業者の社会的保護へのアクセスに関する勧告」を採択。自営業者に失業手当、病気と医療給付、労働災害および職業病に関する利益、老齢給付と遺族給付などの社会的保護策を提供する協議を加盟国に求めている。また、フランスでは2019年11月、プラットフォーム型就業者の労働条件の改善措置や職業キャリアの発展を実現する方法、適切な代金を得る方法などを盛り込んだ憲章をプラットフォーム事業者に課す「モビリティ法」が成立した。
ドイツ連邦労働・社会省も新たな就業形態であるプラットフォームを活用した自営業者が増大すると予測。公的年金制度の対象に自営業者を含めるなどの検討を進めている。アメリカでは2020年1月1日、カリフォルニア州でギグワーカーの生活を保障するギグワーク法(AB5法)が施行されている。
国・地域によってセーフティネットの違いがあるが、日本を含めて今後、フリーランスが増大するのは間違いないだろう。また、企業のジョブ型人事の導入が加速すれば、社員であっても「キャリアの自立」が一層求められてくる。それを促進する職業キャリア教育に対する企業や公的支援の充実も必要になるが、そうした資源をいかに使いこなし、自分のスキルを高めていけるのか。ウィズ・コロナを生きるビジネスパーソン共通の課題である。
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1958年、鹿児島県生まれ。明治大学卒。月刊誌、週刊誌記者などを経て、独立。経営、人事、雇用、賃金、年金問題を中心テーマとして活躍。著書に『人事部はここを見ている!』など。