子どもが未就学児のうちに夫婦間に波風を立てたほうが良い

そのように“行きたくないオーラ”を出されると、誰が行くのかという議論そのものを避けてしまう女性が多いのではないでしょうか。意思を伝えて夫婦間に波風を立てるぐらいなら、自分が我慢すればいいと考えるからです。でも、それでは男性は不満に気づきませんし、意識を変えることもできません。いつまでたっても「面倒なことは妻任せ」から脱することができないのです。

保護者会は大学まで続きます。先々を考えると、むしろ今のうちに議論して波風を立てておいたほうが賢明です。そうでないと夫婦間のアンフェアはずっと続き、保護者会やPTAへの出席も妻だけが担っていくことになるでしょう。

「俺のほうが稼いでいる」「忙しい」という夫への対策

ただ、夫婦間での話し合いもまた面倒なものです。特に夫が「自分のほうが稼いでいるんだから」「家族のために働いているんだから」「俺のほうが忙しい」と言ってくるような人だと、そこで話が終わってしまうこともあるでしょう。

日本ではいまだに男女で賃金格差があり、夫が大黒柱の家庭も少なくありません。稼いでいるほうが仕事に集中するというのは、家計の面から考えれば確かに合理的。でも、人生における価値は「稼ぐこと」だけではないはずです。

子育てに積極的に関わる生き方にも価値がある──。多くの男性がこうした意識を持つようになれば、育児分担にまつわる問題の多くは解消するでしょう。同時に、育児参加とは幼稚園を卒園したら終わりではなく、小・中・高・大学と続いていくことにも気づいてもらう必要があります。

コロナショックの影響で在宅勤務になり、子どもと過ごす時間が増えた男性も多いのではないでしょうか。この時間を、出社できないから価値がないと感じるか、子育てにしっかり関われるから価値があると感じるかは人によって異なります。その意味では、今は夫の子育てへの意識を確認するチャンスでもあります。

この機会に夫婦で話し合い、保護者会やPTAへの出席も育児の一環であるという意識を共有したいもの。そして、子育てにかかる手間や時間はただの「面倒」なのか、それとも大いに価値あるものなのか、夫婦で見つめ直すきっかけにしていただけたらと思います。

構成=辻村洋子 写真=iStock.com

田中 俊之(たなか・としゆき)
大妻女子大学人間関係学部准教授、プレジデント総合研究所派遣講師

1975年、東京都生まれ。博士(社会学)。2022年より現職。男性だからこそ抱える問題に着目した「男性学」研究の第一人者として各メディアで活躍するほか、行政機関などにおいて男女共同参画社会の推進に取り組む。近著に、『男子が10代のうちに考えておきたいこと』(岩波書店)など。