みんなの思いを形にしていく社長でありたい

「支配人の大半は女性です。彼女たち『女将おかみ』の代表として、みんなの思いを形にしていく社長でありたい」

洗って、干して、たたむ

その思いは変わらない。しかし社長の座について8年たった今、一歩先の気持ちが芽生えてきたという。

「経営者の集まる勉強会でとある起業家から、リーダーとは『指導者』ではなく『始動者』だと聞いてハッとしたんです。私はまだ何も“始め”ていない。失敗をおそれずに、何かを始められる社長になること。それが今の目標です」

さまざまな決断に迫られ、頭をフル回転する日々を送る黒田さんの趣味は「無心になれる」という洗濯だ。音楽を聴いたり娘とおしゃべりしたりしながらリビングに置きっぱなしのアイロン台の上で、洗った衣類をたたむのが日課。アイロンがけは得意かと聞いてみれば、「不器用なので大の苦手なんです」とさらりと欠点を告白する。

仕事終わりに役員たちと飲みに行くのも楽しみだという気さくな面も持つ。凛々りりしくも、飾らない。そんな「普通」の姿がまぶしかった。

▼My Favorite
My Favorite
ハンドタオルさえあれば緊張して汗をかいても安心
自宅のタンスの引き出しには、色とりどりのハンドタオルがずらり。「小さい頃からあがり症で。人前でスピーチするときなどは緊張して手に汗をかいてしまうので、吸水性の高いハンドタオルを握りしめています」」
初酒は人生の友。飲み疲れを明日に持ち越さないために
ビールやワインなどお酒が好きで家飲みは毎晩欠かさない。「会社のみんなととことん飲みながら話す!と決めた夜は、肝機能を高める働きがあるという錠剤をあらかじめ飲んで、翌日に持ち越さないよう体調管理をします」
仕事と家庭のスケジュールが手帳を開けば一目瞭然
スケジュール管理は紙派。1カ月の予定を見開きで書き込める薄手の手帳を愛用している。「娘の予定は赤ペン、会議は青ペンで記入しておけば公私の予定が一目瞭然。余白には、仕事への心構えなどをメモしています」

構成=安井洋子 撮影=枦木功

黒田 麻衣子(くろだ・まいこ)
東横イン社長

1976年、東京都生まれ。立教大学大学院文学研究科・博士課程前期修了。2002年、東横インに入社。営業企画部で新規ホテルの立ち上げを担当する。05年、出産・育児のために退社し、夫の転勤にともないドイツへ。08年に副社長として復帰し、創業者である父の後を継いで12年に社長就任。