約4割の残業時間が“過労死レベル”超え

まずは霞が関の現状を知る必要があると考えた私たちは、過去15年の間に自主勉強会などでつながりのできた、霞が関の国家公務員のみなさんに協力を仰ぎ、480人の若手官僚にアンケートを取って「コロナ禍における政府・省庁の働き方に関する実態調査」という報告書を8月に公表しました。

驚くほどの反響がありました。私自身が衝撃を受けたデータもたくさんあります。たとえば、緊急事態宣言が出され、外出自粛が求められる中で、回答者の約4割にあたる176人の残業時間が、“過労死レベル”とされる単月100時間以上でした。中には300時間超えたという人が5人おり、そのうち4人が厚生労働省の職員でした。

全体の単月の残業時間(3~5月の最繁忙月)
ワーク・ライフバランス「コロナ禍における政府・省庁の働き方に関する実態調査」より

また、議員が国会質疑を行う前に、意見交換や想定問答づくりを行うレクチャー(事前打ち合わせ)を行うことも官僚の主な仕事の1つなのですが、その際に「国会議員が官僚に対して、感染予防の配慮を見せていたか?」という問いには、実に回答の9割が「配慮なし」だったと答えています。緊急事態宣言下の外出自粛の中でもオンライン会議がほとんど使われず、直接面会してレクチャーを行ったりしていたというのです。

議員とのやり取りで、官僚の働き方の質を高めるための配慮を感じる変化が起きた
ワーク・ライフバランス「コロナ禍における政府・省庁の働き方に関する実態調査」より

自由記述欄には、「レクに行ったらマスクを外させられた」(厚生労働省40代、防衛省40代など複数)、「国会議員のレクのためだけに出勤せざるを得ない状況だった」(内閣府40代)、「3密の状態でのレクが常であった(15人以上が部屋に膝を詰めてレクを実施)」(財務省20代)、「順番のため事務所の前で密の状態で何十分も立ったまま待たされる。その揚げ句、議員からは、質問要旨に書いてある通りだけど質問ある? と聞かれるに過ぎず、特に質問がない場合はレク自体は5秒で終わる」(文部科学省20代)、「緊急事態宣言解除後は対面に戻ってしまった」(内閣府30代)……などのエピソードが書き込まれていました。

“ファクス約9割”の永田町が、霞が関をブラックに

ツイッターなどで特に反応が大きかったのは、国会議員とのやりとりについて「メールでなくファクスを使う」と回答した人が86.1%もいたことでした。もちろんファクスそのものが悪いわけではなく、場合によっては非常に便利なツールではあります。

議員とのやり取りがFAXからメールに移行した
ワーク・ライフバランス「コロナ禍における政府・省庁の働き方に関する実態調査」より

ファクスの一番の罪は、受信した紙を受け取る人が必要なため、誰かが出勤せざるを得ないところにあります。コロナ禍でリモートワークを進めるうえで大きな壁になりますし、働き方改革の足を引っ張る元凶ともいえます。