知る人ぞ知る、超割安のまま放置されている優良銘柄

今年に入ってユニデンHD株の大株主として投資ファンドが相次いで大量保有報告書上に名乗りを上げたのは、この会社が知る人ぞ知る、超割安のまま放置されている優良銘柄だからだ。

自己資本比率は70%を超えているうえ、その株価は9月18日現在1616円で、株価純資産倍率は0.32倍。理論上の解散価値と株価が釣り合う1倍を大きく割り込んでおり、東証一部市場でも下から数えたほうが早いほど評価が低い。これなら株主が会社の解散を申し立てて負債を返済し、残余資産を配当したほうが株主にとって大きな利益になる。

なにしろ銀座と八丁堀に保有する不動産だけで約200億円の価値があり、これに有利子負債を差し引いた現預金やエレクトロニクス事業の価値を加えれば、企業価値は「300億円に達するのではないか」(金融関係者)とみられている。ところがユニデンHDの上場時価総額は100億円に満たない水準までしぼんだまま。割安株投資のファンドにとって、うまみが大きく見えるのも不思議ではない。

信用調査会社も「株主は会長の資産管理会社とみられる」と推測

しかし「割安のまま放置されている状況が解消されるには……」と、ある金融関係者は条件を付ける。

「……経営者を交代させることが不可欠」

金融関係者がここまで言い切るのは、不適切な会計処理やまともに株主総会を開けないことばかりが理由ではない。「創業者の藤本秀朗会長ら一族による会社の私物化が著しい」(同)からだ。

有価証券報告書によると、旧ユニデンが持ち株会社に移行した翌期の2017年3月期には、子会社のユニデン不動産に対するユニデンHDの保有比率が100%から33%へと低下。関連当事者間の取引として、藤本会長の資産管理会社フジファンドがユニデンHDから子会社の譲渡を受けたことや、その増資を引き受けたことが記載されている。どの子会社が譲渡されたのか、有報には記されていない。

しかし保有比率が低下したのと「子会社の譲渡」が同じ期に重なっているうえ、信用調査会社も「ユニデン不動産の株主は藤本会長の資産管理会社であるフジファンドとみられる」と推測している。また譲渡の価格が適正かどうかもはっきりしない。