効能よりも大事な「売れた要因」
ボタニストをつくったのは、先にも述べたように、大阪のI-ne(アイエヌイー)という会社です。ここは、コンセプトとパッケージデザインだけをつくる会社で、自社工場などを持たず、製品の中味の開発や生産・出荷は外部に委託している。つまり製品そのものに関しては外注先に任せているので、パッケージに力を入れたのではないでしょうか。
実はボタニストのターゲットである、オーガニックにひかれる人たちは、シャンプーの中身にそれほど詳しいわけではないし、効能よりも商品の見た目のほうが大事。
「ラックスとかTSUBAKIはいかにも家族向けだし、おばちゃんっぽい。私のバスルームにあっても、気分が上がらないよね。その点、ボタニストみたいなシンプルなボトルがバスルームにあったら素敵だし、インスタ映えしそう」
ボタニストは、このような女性たちの感覚をとらえることに成功したのです。
大企業ほど出遅れる傾向
とはいえ大手のユニリーバも、ナンバーワンブランドであるラックスの相対的な売り上げの低下を放っておくわけにはいかなかったのでしょう。その後「ラックスプレミアム」というラックスの上位ラインから、「ラックスボタニフィーク」というオーガニックを意識した商品を発売しました。これを見ると私などは「出すんだったら、もうちょっと早めに出せば良かったんじゃないの」と思ってしまいますが、そこはナンバーワンブランドの余裕かもしれません。
実はこのように大手企業が出遅れるのは、今回のオーガニックブームが初めてではありません。以前、ノンシリコンシャンプーが流行ったときも、同じように出遅れています。
大企業ほどイノベーションを起こしにくいものですが、次に何か大きなブームが来たときはどのような動きを見せるのか、注目してみると面白いと思います。
構成=長山清子
大日本印刷、外資系広告会社J.ウォルター・トンプソン・ジャパン戦略プランニング局 執行役員を経て、2010年にインサイト社設立。初著『インサイト』(ダイヤモンド社)で、日本に初めてインサイトを体系的に紹介。他に『インサイト実践トレーニング』『戦略インサイト』(ともにダイヤモンド社)など。商品開発・ブランド育成などのコンサルティングを行っており、消費財・サービス・テック系企業などで実績多数。インサイト オフィシャルページ