安倍政権、女性87万人の雇用喪失で終焉を迎える

もしかしてひょっとして日本の風景が変わるかもしれないと思わされた「女性活躍推進法」の施行は2016年4月。初の女性都知事である小池百合子が率いる東京オリンピックを世界に見せつけよう、変化した日本の新しい姿を世界に見てもらおう、訪日客数もうなぎ上りでインバウンド産業は成長お墨付き。そうさジャパンはクールで人気者でイケイケさ、雇用拡大、多様性の包摂、やっちゃえニッポンええじゃないか、という夢を日本が見たあの頃、2020は国民的合言葉であり、目標だった。

さて、コロナ禍に見舞われ、東京オリンピックの延期を見た2020年。いまの日本女性はどんな姿をしているだろうか。10年の時限立法である「女性活躍推進法」が施行されて4年と少し、そろそろ半ばへとやってきて手応えもバッチリ、と言いたいところだが、現実はそうはいかない。

コロナ禍の影響で、7カ月間で女性87万人の雇用が失われたという。多くが非正規労働者の雇用調整によるものであり、その直撃を受けた領域こそが、五輪のおもてなし需要を見込んで女性の雇用が著しく伸びていた宿泊や飲食、小売り業界だ。

非正規雇用は、景気の影響をもろに受ける。では雇用が比較的手堅い正社員なら順風満帆でイキイキと女性活躍が推進されているのかというと、「正社員女子の6割が管理職になりたがらない」……。いまだ日本のカイシャにおいて管理職というポストはそれほど圧倒的に絶望的に魅力がないまま、安倍晋三氏は2度目の体調不良で首相の座を降りてゆく。

何度も蒸し返された「女性のほうがイヤがるんですよ」

女性活躍推進法は2016年か……。このプレジデントウーマンオンラインで週1(当時)の連載コラム(『河崎環のWOMAN千夜一夜』)をゴリゴリ書いて世間をメッタ斬りにしていた、返り血まみれの日々を思い出す。あの頃、団塊ジュニアの女性は出産リミットと向き合い、氷河期世代の女性は結婚出産の不条理な男女非対称性に憤慨し、女性が働くというトピックには、いつもひとさじの切なさがあった。

当時、SNSで人知れず罵詈雑言を吐くことでかろうじてバランスを保つような、毎日いっぱいいっぱいの働く女性、働く母親たちがいた(今もいる)。

「働け、結婚し立派に産み育て、介護せよ。それが女性活躍である」という意味わからん無理ゲーが強いる圧倒的に不利なルールに戸惑いながら「包摂」され、すり減った彼女たちの声はいつも鋭さを帯びていた(今も帯びている)。

「女性に輝いていただく」との安倍首相の言葉に「輝け輝けって、女はホタルイカか」。「日本死ね、だなんてそんな品がないブログを本当に子育て中の女性が書くなんて信じられない」との平沢勝栄議員の言葉に「どこの世界線を生きてんだ? 現実見えてんの?」との非難が殺到していた。

そういうのを一つひとつ時間をかけて、第一線で働く女性たちや彼女たちを応援するメディアが「おかしいですよね?」と指摘していった。「自分が逆の立場になったらわかりますよ? 想像力働かせてみてくださいね?」と、VR装置ばりに現実を仮想体験できる詳細な説明をして、おじさんたちは「お、おう」と納得したようなしないような返事をし、その晩どこかの居酒屋で「理屈っぽい女はやだねー」とかクダを巻いて全部忘れるのである。

で、しれっと「いやー、弊社では女性社員のほうが管理職になるのを嫌がるんで、私たちも困っているんですよ。ウチは制度も万全だし気遣いもしているんだけど、昇進を打診しても本人たちが嫌がるんだからしょうがない」なんて、あちこちでしたり顔をするのだ。