私たちが登りたいのは、あなたが登ってきたその山じゃない

「昇進を打診しても本人たちが嫌がる」のは、あなたたちが思っているほど万全な制度でもなければ気遣いもされていないし、要は管理職になるメリットが薄いからだ。男性のあなたたちには、一生を賭けてでも登りたい(登るしかない)サル山なのかもしれない。でも女性から見ると、登る意味や登りがいがあるほどの山じゃないのだ。

登ったところで見えるのは、冴えないおじさんたちが(グループチャットで5分で終わるような意思決定を)あーでもないこーでもないとドヤったり牽制したりしながら3歩進んで2歩下がるのを延々2時間繰り返すマジダルい会議とか、なんか知らんが「君に期待してるよ」「わからないことがあったらいつでも聞きなさい」「いい鮨屋(バーの場合もあり)があるから」とどこから目線なのか粉かけてくるじーさん(誰?)とか、前時代の喫煙室の陰口とかである。

あのね、女子の人生にとって大切なことは、もっと他の場所に、もっとたくさんあるから。女子って、あなたたちよりももっと人生をマルチに柔軟に楽しんでるから。私たちが登りたい山は、あなたが必死で登ってきたそんな山じゃないのよ。

「管理職になりたくない」に込められた女たちの絶望

男性社会の古い既存の枠組みの中に、女性を「呼んでやる」「組み込んでやる」、「あれこれわがまま言ううるさい女のために、いろいろ準備しといてやる」という男性の思惑とか態度に、実は女性はものすごーーーーく敏感に気づくのである。

あ、言っとくけど、男の「サプライズ(ドヤァ)」って、女の8割はほぼ気づいてるけど言わずに「きゃーうっそー気づかなかったーありがとー! すごーい」って乗ってあげてるだけだからね? その涙は「よくやった、そこまで成長して偉いぞ」っていう意味の感動だからね? 社会的マナーとして。

だからもう一度言っておく。「弊社では女性社員のほうが管理職になるのを嫌がる」のはつまり、女性たちが「あなたたちと管理職をすることに絶望している」のである。

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河崎 環(かわさき・たまき)
コラムニスト

1973年、京都府生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。時事、カルチャー、政治経済、子育て・教育など多くの分野で執筆中。著書に『オタク中年女子のすすめ』『女子の生き様は顔に出る』ほか。