ステップ1.理事長の言葉

男性管理職の方々を集めて、最初に「女性活用というのは、女性のためではなくて会社を強くするためにやる重要な経営戦略だ」ということを徹底的にお話しします。すると、「そうか」と、とりあえず真剣に考えるようにはなります。

NPO法人J-win 理事長 内永ゆか子さん
写真提供=NPO法人J-Win

でも、「女性のほうが『管理職は結構です』『育児もあるし、家事もあるから大変』と言って断ってくるんですよ」などと言ってきます。「僕たちはもう、十分支援してますよ。なのに、なんでうまいこといかないんですかね」と聞いてくるんですね。

実際、制度面でいえば日本の女性活躍を支援する制度は世界のトップテンに入るくらい優れています。育休制度もしっかりしていますし。大きな問題はそれとは別のところにあるんです。そこで、私がOBNという言葉を出して、それがどういうことかを説明するんです。

最初のうちはけっこう反発がありました。しかしそこでこちらが、「あなた方のそういうところが悪い」と言ってしまってはダメ。「何が悪いんだ」「自分たちはずっとこうしてうまくいってたんだ」と感情的になるのが関の山です。

そうではなくて、「そういう女性の仲間入りを阻むものがある」ということをまず伝えます。私は自分で経験した具体例を話しますが、他にもいろんな人を連れてきて少しずつお話しいただく。これには男性のエグゼクティブが一番いい。OBNについて目が開かれている方もいますから。そして、男性たち同士で「本当にそういうものがあるかどうか」を議論してもらいます。

ステップ2.女性陣によるショック療法

J-Winには3層の女性ネットワーク(管理職、管理職一歩手前の約300名、部長職・課長職の約300人、執行役員以上の五十数人)があるんですが、そのメンバーである女性百数十人から、「男性ネットワーク」の参加者がOBNについてのアンケートを取りました。

「男性管理職が無意識に行っている行動や考え方」として挙がったのは、「過度に上司に配慮する」「女性への決めつけ」「傾聴しない、見てくれない」「対抗意識」「放置・丸投げ」等々。12にカテゴライズしていますが、他にもいろいろありました。女性たちからの厳しい言葉を受けて、皆さんかなりショックを受けていたようですが、その後に「食事のスピードは女性に合わせる」とか、「歩く速さは女性に合わせる」ところから始めようなど、具体的にどういう行動をするのかという指針もつくっていました。

もう一つ行ったのは、前述のJ-Win女性ネットワークのうち、エグゼクティブの女性たちと男性たちとのディスカッション。エグゼクティブの女性が、「こういうことがある、ああいうことがある」と具体例を山ほど挙げるんです。役員になるまでにいろんな経験をされていますし、男性とのコミュニケーションが本当にうまい。男性陣も本当にいろいろ悩んでいる方がいるし、相手が役員ということで一目置いているからか素直に話をきく。毎年盛り上がってきていますよ。

ステップ3.男性同士の議論

「男性ネットワーク」では、分科会という小グループで、女性活用の課題に取り組みます。最初のころは、いろんな仕組みづくりや人事施策を議論するグループができました。が、徐々に正面切って「OBNって何だ」を議論していくようになり、そして1年ほど経ったら、「いや、俺たちのカルチャーが災いしていたんだ」「制度の問題じゃない」「目が覚めました」とハラ落ちしてくれます。

最後の最後で、自分たちの行動の問題点に気づくことが大事なんだという結論に達するんですね。何とか仕組みや施策で女性活用の問題を解決しようとしていた人たちも、最後は深く反省していました。