政府は2020年までに指導的立場に立つ女性の割合を30%に増やす目標を、「2030年までのなるべく早く」と大きく先送りしました。日本が女性管理職を増やすことができない原因の一つ、「OBN」とは――。NPO法人J-Winを設立し、理事長として長らく女性の活躍支援をてがけてきた内永ゆか子さんに聞きました。

最後のビッグイシューに取り組む

女性の活躍を阻んでいる壁は、次の3つ。1つ目が、女性の将来像の描き方。2つ目は、いわゆるワークライフバランス。3つ目が、オールド・ボーイズ・ネットワーク(以下、OBN)。私たちはこう分析しています。

私たちは先に女性側の問題である1、2の改善にずっと取り組んできました。それなりに成果も出ているのですが、女性活用はなかなか進まない。本丸はやはりOBN。日本のダイバーシティ推進が世界から取り残されていく中で、いよいよこの問題に切り込んでいくしかないと考え、3年前から取り組み始めました。

NPO法人J-win 理事長 内永ゆか子さん(写真提供=NPO法人J-win)
NPO法人J-Win 理事長 内永ゆか子さん(写真提供=NPO法人J-Win)

OBNは日本発ではなく、グローバルで使われている言葉です。私も国境を越えて働いている知人から初めて「OBNが一番難しい、最後のビッグイシューだ」ときいたときは、何のことかよくわかりませんでした。「何それ?」と聞き返したら、「組織があって、大きな成功を収めていて、長い歴史があって、そこにいる人たちが成功体験を共有し合いながらお互いに築いてきた、あ・うんの呼吸やビジネスルール、約束事等々を総称したもの」だというんですね。そこで初めて知ったんです。

組織があれば、どこにでもこういう事が存在します。でも、その中でも日本の職場は、男性中心で単一性が強いモノカルチャー。そういうルールや約束事を明文化しません。私の雑駁ざっぱくな感覚でいうと、いろんな行動パターン、ものの言い方、反応の仕方、反論の仕方、コミュニケーションの取り方のうち7割が、あ・うんの呼吸。言葉になっているのは3割程度です。

これを女性が身につけることが非常に難しいのが問題です。