12歳の娘を単身英国の寄宿学校へ進学させる
小学5年生の頃でしょうか。「こんな選択肢もあるのよ」と、母が見せてくれたのが、お城のようなステキな校舎の写真が並ぶイギリスの寄宿学校のパンフレット。私は、児童文学『あしながおじさん』(ジーン・ウェブスター著)の世界をイメージし、「おもしろそう! 行く!」と即決して、12歳で単身渡英。ロンドンの中高一貫校に進学し、寄宿舎生活が始まります。
でも、すぐに後悔することに。英語もろくに話せず、学校で唯一の日本人。ホームシックで毎日泣いていました。ただ入学前に「あなたならできる。でも、帰ってくる場所はあるのよ」と母に言われていたので、その言葉を支えに、「もう少しがんばってみよう」と思い続けていたら、ホームシックを脱していましたけど。母いわく、私の個性に鑑みて、タイミングを見計らって声を掛けたのだそう。これからは世界が舞台になると見極めていたのですね。
母は人をやる気にさせるのがとてもうまい人。私もまんまと乗せられたよう(笑)。でも、12歳の子どもを1人で異国へ送り出すなんてよほどの覚悟がなければできません。実際、母は周囲から「鬼のような母」だとか、「育児放棄している」など、心ない言葉を投げかけられたそう。私自身、2人の子どもを持つ母親として、わが子を12歳で1人海外へ送り出せるかと問われると、自信がありません。今更ながら、母の勇気と覚悟に感謝でいっぱいです。
中学生になった私を母は一人前の女性として扱うようになりました。渡英後、年に4カ月ほど帰国する際、勉強会や会食など母の仕事に同行する機会が増え、そこで初めて母が仕事をする姿を見ることに。そして、1人の女性、私の母親、祖父母の娘、会社経営者、起業家……母にはいろんな顔があることを知り、母のことを知れば知るほど、その偉大さを感じるように。母はとてもチャーミングで、笑顔のステキな人。
仕事相手と接する様子を見ていても、母が皆から愛されているのがわかります。そんな人となりのせいか、母は人をどんどん巻き込んでいくのです。それはもうパワフルなまでに。やると決めたことは、必ずやり遂げる。可能性にフタをせず、どうすればやり遂げられるのかを考え、目標を達成する。目標が達成できなくても別の成果を上げてくるんです。転んでもただでは起きない性格で、「私の通った後にはペンペン草すら生えない」と自分で言っています(笑)。