あなたは、あなたのやり方であなたらしく――

ポピンズに入社し、創業者である母・中村紀子と仕事をするようになって8年。今まで気づかなかった母の“仕事への覚悟”を強く感じるようになりました。同時に、母が築き上げたこの会社を“覚悟”を持って引き継ぎ、次の時代につなげていけるのは自分しかいないと強く感じるようにもなりました。

「母は明るい太陽のような人。起業してから今まで、大変なこともいっぱいあったでしょうが、母から泣き言を聞いたことは1度もありません。母の涙を見たのも祖父のお葬式のときだけ。『大変なこともあったのでは?』と聞くと、『いろいろあったけど、まぁいいじゃない』と。過去を振り返らない人なんです」
「起業してから大変なこともいっぱいあったでしょうが、母から泣き言を聞いたことは1度もありません。母の涙を見たのも祖父のお葬式のときだけ。『大変なこともあったのでは?』と聞くと、『いろいろあったけど、まぁいいじゃない』と。過去を振り返らない人なんです」

25年間の海外生活、フランスのビジネススクールでMBAも取得し、ヨーロッパの企業で働いてきた自負もありましたから、入社当初は、周囲のやり方に合わせることもせず、自分のやり方を押し通そうとしていました。そんな自信過剰な態度は周囲と軋轢あつれきを生み、結果も出せず、やることなすこと空回り。それに引き換え、母は4000人もの従業員を抱える事業のトップに立ちながら、社員教育から事業展開まですべてを把握し、部下へ指示するだけでなく、必ず細部までチェックを行う、私から見ても理想のリーダー。そんな仕事ぶりを見るにつけ、今まで以上に母の偉大さを感じました。

よく「親を超えるのが子どもの使命」と言いますが、私は同じ土俵で母を超えようとは思いませんし、母は超えることのできない大きな存在。子どもの頃から、母に「あなたは、あなたのやり方であなたらしく」と言われてきました。母と比べても無意味ですし、母と同じことはできません。