初動で成功しても抑え込めない新型コロナ

幸か不幸か、SARSやMERSは世界的な大流行にまではならず、総患者数・死者数ともに今日の新型コロナとは比較にならないほど少なかったため(SARSは総患者数8439人/総死者数812人、MERSは2254人/790人)、ロックダウンや経済活動の制限などはなく、今日の新型コロナほどの経済的損失は出ていません。ただそれでも、一時的に観光客が減ったことのダメージはあり、たとえば韓国では夏の訪韓外国人旅行者が80%も減り、経済的損失は1000億ウォン(112億円)以上にのぼったそうです。

いずれにせよ、今回の新型コロナ騒動では、過去に苦い経験をもつ国々が、初期対応をうまくこなせていますが、全体からわかることは、実は彼らも、かつては今の日本と似たような不十分な対応だったということです。ただ、過去の教訓がある国の中でも、発展途上の国を見ると、今回も有効な対策が打ち出せないまま被害が拡大しているうえ、韓国・シンガポール・台湾ですら、初動に成功した後の一瞬の気の緩みから、再び集団感染が発生しています。感染症との闘いは、本当に厄介です。

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蔭山 克秀(かげやま・かつひで)
代々木ゼミナール公民科講師

「現代社会」「政治・経済」「倫理」を指導。3科目のすべての授業が「代ゼミサテライン(衛星放送授業)」として全国に配信。日常生活にまで落とし込んだ解説のおもしろさで人気。『経済学の名著50冊が1冊でざっと学べる』(KADOKAWA)など著書多数。