新型コロナウイルス感染症発生から約半年。振り返ってみると、初動の遅れが原因で感染が拡大した国がある一方で、初動対応に成功し、被害をうまく抑えた国もあります。後者の代表は、韓国、シンガポール、台湾など。共通点は「少し前に痛い目に遭っている」こと。蔭山先生に詳しく解説していただきます。
フェイスマスクを着用した中国人男性
※写真はイメージです(写真=iStock.com/Travel Wild)

新型コロナ対応の遅れは、バイアスが原因!?

2020年現在、世界で猛威を振るう新型コロナウイルス感染症問題では、欧米の主要先進国をはじめとし、初動の遅れで被害を拡大させた国が多く見受けられました。

そこで強く感じられたのは、「正常性バイアス」と「自信過剰バイアス」です。これらは行動経済学や社会心理学の用語ですが、まず正常性バイアスとは「自分の認めたくない情報を受け入れず、現実を過小評価」してしまう心理的偏りであり、自信過剰バイアスは「根拠なく“自分だけは大丈夫”と思い込む」心理です。

両者に共通する部分があるなら「想像力の欠如」です。2020年2月初旬、日本がクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の対応に右往左往していたとき、欧米メディアは、こぞって日本の対応のまずさを批判しました。

しかし、あの頃の報道全体に漂っていた「対岸の火事」感こそ、これらのバイアスだったのです。本来ならあれを見て「明日はわが身」と襟を正すべきだったのに、欧米メディアはアジアが慌てふためく姿を、ただひとごととして娯楽的に消費しただけでした。