変化のチャンスは相手に“ギブ”をすること

とはいえ、変化することは怖いですよね。だからこそ、自分に意味を感じてくれるパス回しする相手を見つけていくことが大事だと思います。

ギブは2種類あります。1つは、自分の内側にある力で、人にありがたいと思われること。2つ目は、相手の視点に立って、自分の外側にあるモノを自分の思いを載せてギブすることです。

自分の内側にある好きをギブしていく中でライフワークに出会い、ギブした相手とライフワークに夢中になっていくうちに気づけば遠くまで来ていたり、好きな相手の視点に立って、相手が好みそうなものを探しているうちに、自分の壁を乗り越えていけるようになっていたりと、ギブには気づいた時には遠くまで行けている力があると信じています。

何よりあなたからのパスを喜んでくれる相手が見つかれば、失敗すら楽しみに変わってきます。「役に立つ」で成立する付き合いは「役に立たなければ」ツライですが、「意味がある」付き合いには、ミスや失敗も(むしろ失敗のほうが)いい思い出になりますよね。

たった一人にでも“ギブ”することで未来は変わる

変化の時代は、昨日まで正解だった解決法が通用しなくなる時代です。誰も知らない未来に向かう旅路は教科書に載っている解き方をなぞることではなく、たくさんの失敗の中で正解に辿り着くしかありません。そして、むしろ「役に立つ」ことに価値がなくなる時代では上質なレストランのステーキよりも途中の失敗も含めて楽しめるBBQのほうがずっと「意味」という価値があります。

尾原和啓『あえて数字からおりる働き方 個人がつながる時代の生存戦略』(SBクリエイティブ)
尾原和啓『あえて数字からおりる働き方 個人がつながる時代の生存戦略』(SBクリエイティブ)

あなたに1人でも2人でも失敗を含めて楽しめるパス回しができるギブの相手がいれば、つい不安になってしまうくらい先のわからない未来への旅も、楽しい冒険の旅路に変わりませんか?

むしろ見えない未来こそ、新しいギブの種がたくさん眠るワクワクの宝の山です。さあ、ギブを通じて見えない未来に恋しよう。その先にきっとあなたは誰かにとって意味のある存在になり、それが積み重なっていって、何者かになっていく。

楽しくないですか?

小さなギブと「有り難う」からはじめましょう。

写真=iStock.com

尾原 和啓(おはら・かずひろ)
IT批評家

1970年生まれ。京都大学大学院工学研究科応用システム専攻人工知能論講座修了。マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、NTTドコモのiモード事業立ち上げ支援、リクルート(2回)、ケイ・ラボラトリー(現:KLab、取締役)、コーポレイトディレクション、サイバード、電子金券開発、オプト、Google、楽天(執行役員)の事業企画、投資、新規事業に従事。経済産業省対外通商政策委員、産業総合研究所人工知能センターアドバイザー等を歴任。著書に『アフターデジタル』(共著、日経 BP)、『ITビジネスの原理』(NHK出版)、『モチベーション革命』(幻冬舎 NewsPicks book)、『プロセスエコノミー』(幻冬舎)など多数。