ついに家庭にも及ぶか、#MeToo運動

#MeToo運動が起きたのは2017年10月だが、フランスではこれが、今、セクハラやレイプだけでなく、あらゆる場における男女の格差をなくすための運動に発展しつつある。

そしてこの動きは家庭にも及びはじめている。フランスのマーケティングリサーチの会社、IFOPが2019年に発表した調査結果によると、家事を理由にした夫婦・パートナー間の口論は年々増えており(2005年42%、2009年46%、2019年48%)、特に若い人々の間で増加が目立つ。

家事分担の不均衡の背景には、男女間の賃金の不均衡の問題もある。4分の3のカップルで、男性の収入の方が女性よりも高いために女性自らが「彼の仕事の方が大切」と思ってしまい、無意識にその埋め合わせのために家事分担を引き受けてしまうことがあるからだ。男女の労働賃金を同等にし、女性労働者の比率が多いセクターの賃金を引き上げることも必要だろう。

また、第一子が生まれるまでは、パートナー間での家事分担はほぼ同等なのに、出産休暇中に女性は育児・家事を一人でやる習慣をつけてしまうというケースも多い。父親の育休を義務化し、スペインのように給与の100%分の給付金付きで8週間(2021年には16週間になる予定)に延長ということはできないだろうか? いくら経験がないといえども、一人で8週間家事・育児をすれば、コツはつかめるようになるだろう。

「男女同賃金を!」と書かれたポスター。パリ20区のトランスヴァール通り(写真=プラド夏樹)
「男女同賃金を!」と書かれたポスター。パリ20区のトランスヴァール通り(写真=プラド夏樹)

家庭内での家事分担にまで政治を介入させるのは抵抗があるという人もいるかもしれない。しかし、制度を変えることで、社会の意識を変えていくことは可能なはずだ。「家事は女の仕事」という構図は、私たちの世代で終わりにしたいものだ。

プラド 夏樹(ぷらど・なつき)
フランス在住ジャーナリスト

慶応大学文学部卒業後、渡仏。在仏30年以上。共同通信デジタルEYE、駐日欧州連合代表部公式マガジンEUMAG、WAN、YAHOO!個人ブログなどに寄稿。労働、教育、宗教、性などに関する現地情報を歴史的・文化的背景を踏まえた視線から発信。著書『フランス人の性 なぜ#MeTooへの反対が起きたのか』(2018年、光文社新書)でフランスの性教育について紹介。共著に『日本のコロナ致死率は、なぜ欧米よりも圧倒的に低いのか?』(2020年、宝島社)、『コロナ対策 各国リーダーたちの通信簿』(2021年、光文社新書)。