最悪1秒後に死ぬし、最高でも数十年後に死ぬ

大切なことは、生まれて死ぬという一生の計画を、よく考え、イメージすることです。誰もが、最悪1秒後に死ぬし、最高でも数十年後に死ぬ。人生のなかで、必ず何らかの予測できないことが起きます。予想通り死ぬ人なんていないのです。そう考えれば、新しい環境にも適応すればいいし、適応するしかないのだと、純粋に思えます。

どんなことが起ころうとも、心はかき乱されず、イキイキと「生きること」に注力していればいいのです。会社の社員としてどう生きるべきか、ではなく、まずは「人間として何をすべきか」。私は皆さんに、人間として生きる一つの選択として、今の仕事を選択していますか、ということを問いたいですね。

このように、俯瞰的な視点をもっている人は幸せな状態にあることが研究によって明らかにされています。もちろん、幸せについてだけでなく、不幸せについても考え、準備しておく必要があります。最悪の事態を想定しておくことは、ネガティブシンキングではありません。ポジティブ心理学は誤解されがちなのですが、ポジティブなことだけを考える学問ではなく、ネガティブなことがあっても大丈夫、ネガティブとポジティブを包み込むように考えましょう、という学問です。常に俯瞰的視点で、ネガティブな事柄でも、ポジティブに捉えることが大切なのです。必要以上に恐怖に支配されるべきではありません。判断力も鈍るし、他人を攻めてしまったりします。

幸せな人の4つの要素

やりがいを持ち、今、生きていることに感謝し、何とかなるとチャレンジして、いつ死んでも悔いがないように、ありのままに自分らしく生きる。これができていれば、何も恐れる必要はありません。

一度しかない人生、皆さんがそれぞれの人生をどう生きるか。ぜひ、この機会に考えていただきたいと思います。

東日本大震災が起こったとき、日本人の心は変わったと言われましたが、残念ながら多くの人は戻ってしまいました。この時、しっかりと一歩を踏み出し、意識と生活を変えた人は、もう元には戻らないでしょう。未来を予想できない時代の到来を機に、皆さんが本当の幸せに気づき、自分らしい人生を手に入れることを心から願っています。

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前野 隆司(まえの・たかし)
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授

1962年山口県生まれ。84年東京工業大学工学部機械工学科卒業、86年東京工業大学理工学研究科機械工学専攻修士課程修了、同年キヤノン株式会社入社。慶應義塾大学理工学部教授、ハーバード大学客員教授等などを経て、2008年慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科教授。11年同研究科委員長兼任。17年より慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長兼任。研究領域は、ヒューマンロボットインタラクション、認知心理学・脳科学、など。『脳はなぜ「心」を作ったのか』『錯覚する脳』(ともに、ちくま文庫)、『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門』(講談社現代新書)など著書多数。