「全員複業」のメリットは、デメリットを補って余りある

もうひとつの柱「全員複業」も、創業時に決めました。僕は、人を評価するときは働く量や時間ではなく、「どんな価値を出したか」で評価すべきと思っています。「たくさん働いた方が偉い」という風潮のある大企業ではよく、時短勤務中に肩身が狭そうにしている女性をみてきたのですが、よくよく考えると彼女たちって、子育てと企業で2つの価値を出している、スーパーな複業人材なんですよ。全員複業をルールにすれば、時短でも子育て中でも引け目を感じることなく価値に集中できますよね。

もちろんデメリットもあります。ほかの仕事や子育てが忙しくなると当社へのコミットや、マインドシェアが低下することはあります。全員が同じ時間に同じ場所で集まること自体もそもそも難しい。でも3年続けてみて、それを補って余りあるメリットがあると実感しています。

最大のメリットは、優秀な人材に参加してもらいやすいことです。多くのベンチャーが一番苦労するのは、人材の確保です。給料も大企業ほど出せませんし、優秀な人ほど重要なプロジェクトをまかされているので、お誘いしたタイミングに「ちょうど仕事が一段落していて転職できる状態でした」なんてことはほぼない(笑)。

考えてみれば当然のことで、大企業で能力を発揮している人に、先のわからないベンチャーに転職してもらうのは相当ハードルが高いですよね。ところが、これが複業だとハードルがぐんと下がります。ビジョンに共感すれば1回のランチだけで「参加しますよ」と即答してもらえることも多く、当社ではそれが成長につながってきました。

スピードスケートではなく「フィギュアスケート型」で行く

もうひとつのメリットは、事業や環境の変化に柔軟に対応していけることです。

長年新規事業をやってきて痛感していますが、事業成長の要素は、自社でコントロールできることばかりではありません。トレンドや働き方改革、災害、今回のコロナなど、周囲の社会情勢からもさまざまな影響を受けます。

新しい事業は、そういう社会のタイミングに合わせてリソースを投入することが大事です。僕はよく「社会のフタが開く」という言い方をするのですが、「フタ」が開くまでは少ないリソースでじわじわと準備を進めておき、その事業の強みが生きるような「フタ」が開く時に、バッとリソースを集めて世に送り出す。これは全員が本業の会社では至難の技ですが、複業なら柔軟に対応が可能です。

ただ、社会のフタが開くのには時間がかかります。だからuni’queの成長は「フィギュアスケート型」。スタートアップ企業は、脇目もふらず全力で走り続ける「スピードスケート型」が多いのですが、資金調達をして一気に社員を増やしても、社会のフタが開く前に死んでしまったりする。当社は社会のリズムに合わせて緩急をつけて踊りながら、成長すべき時に大きく成長する形をとりたいと思っています。