Z世代女子「女性は後伸びしない」に怒り

【原田】過去にある企業の人事担当者に聞いた話では、「女性は後伸びしない」って言うのには、彼らなりの根拠が2つあって、1つは「キャリアの途中で産休で抜ける」、もう1つは「リーダーとして伸びる人材は男性に多い」ということだそうなんだ。前者は自然の摂理で変えようもないけど、欧米のように家庭の中で家事と育児が両立されて早く産休から復帰できると改善できる可能性がある。後者の方は先程も言ったけど、偏見や時代がそうさせているのか、あるいは、仮に事実これまでそうであったのなら、どうしたら変えていけるのかを真剣に考えるべきなのだけれど……。

【図表1】共働きでも妻の家事・育児負担は夫の2.3倍

【鈴木さん】そんなこと言うのって男性じゃないですか? でも女性が言ったとしても嫌だな……。どっちにしても、そういう考え方の会社には行きません。

【島本さん】私も。ずっと働き続けるつもりだから、そんな考え方の会社には行けません。これまでのデータがそうだったとしても、女性が伸びないなんて偏見でしかないと思います。

【原田】この問題についてはかなりヒートアップしたね。確かに日本企業はまだまだ古い企業が多いので、就活生の、特に女子は大きな違和感をもつケースも多いんだろうね。君たちのようなZ世代(1990年代後半~2000年生まれの若者)が働き手の中心になるころには、日本は必ず変わるだろうと感じたよ。

今回の座談会は、Z世代の男女平等意識がよくわかるものでした。従来、日本では若い女性の専業主婦希望率が高く、特に平成の間はずっと上昇傾向にありました。しかし、Z世代を対象にした調査では逆に減少傾向を見せています。ここから考えると、働くということについては今まさに新しい世代、新しい考え方の女性が生まれつつあるのではないでしょうか。さらに、男子のほとんどが職場での男女比率に違和感を覚えていたことから、Z世代の男性にも同じことが言えそうです。

SDGsの中の男女平等について、企業は今後真剣に取り組む必要があるでしょう。意識するだけで実践していない企業に対しては、学生はすでにそっぽを向き始めています。この変化に取り残されないためにも、ぜひ男女平等への取り組みを加速していただきたいと思います。

構成=辻村洋子 写真=iStock.com

原田 曜平(はらだ・ようへい)
マーケティングアナリスト、芝浦工業大学教授

1977年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーを経て、現在はマーケティングアナリスト。2022年より芝浦工業大学教授に就任。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。主な著作に『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』(幻冬舎新書)、『パリピ経済 パーティーピープルが経済を動かす』(新潮新書)、『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』(光文社新書)、『寡欲都市TOKYO』(角川新書)、『Z世代に学ぶ超バズテク図鑑』(PHP研究所)などがある。