「この人、偏見を持っているな」と感じる人と仕事をするのは、なるべく避けたい。しかし、その人のバイアスを取り除いたり、考え方を変えようとするのは、すぐには難しいものです。立ち向かっても、衝突するだけで、お互いにわかり合うのに時間がかかる。それよりも、「この人のバイアスはこの人のバイアス、でもこのバイアスを私の中に埋め込む必要はない」と考えます。
バイアスの強い人の質問には、質問で返そう
バイアスの強い人とコミュニケーションするときには、ちょっとしたコツがあります。私が経験の中で編み出した技ですが、「バイアスがかかっている質問には、質問で返す」こと。たとえば、私が昔よく言われたのは「先生は忙しいですよね。ごはんは誰が作るんですか?」。そうしたら私は「お宅は誰が作るんですか?」と質問で返します。「お子さんが寂しがりませんか?」と言われたら「お宅のお子さんはどういうときに寂しがるんですか?」と質問で返す。これはぜひ覚えておくといいですよ。
でも、その人のバイアスのせいで精神的負担を感じるときは、言葉で「あなたのバイアスは私にとってプレッシャーだし、嫌な気持ちがするんです」と伝えないといけません。
パートナーとは、互いのバイアスを把握しておく
周囲の人を変えることはできませんが、身近な人、たとえば配偶者やパートナー、恋人などは別です。お互いに影響を与え合う存在ですから、自分や社会に対して、どんなバイアスを持っているか、ちゃんと知っておいたほうがいいですね。
たとえば相手の母親像が、「子どもが帰る時間には、家にいて『おかえり』というもの」であるなら、あなたが「子どもを預けて働きたい」と言うと「子どもがかわいそう」という言葉がポンッと悪気なく出てきます。
バイアスの裏に隠れているのは期待値なんですよ。女性に対する期待値がある意味、変形してバイアスになっている。そういう期待値を1つずつつぶすには、やはり話し合いしかない。人間の頭は言葉でできているので、話し合わなければ、わかり合えません。私たち夫婦の場合は、嫌なことが起きてから話すと嫌なことばかり話すから、できるだけ前もって話し合いました。とことん話し合ったことで、お互いのバイアスがわかり合えましたね。
①自分自身のバイアスを自覚し、取り除く努力をしよう
②人のバイアスはできる限り気にしない。嫌なら言葉で伝える
③パートナーとは、お互いのバイアスをとことん話し合う
構成=池田純子
キャリアカウンセラー。1958年生まれ。埼玉県職業訓練指導員、立教大学大学院ビジネスデザイン研究科特任准教授、東洋大学経営学部経営学科准教授を経て現職。近著に『わたしの人生は、わたしのモノ』(朝日新聞出版)。