▼歩く

重心は常に体の中心で保ち、腰や腿の力を使って体を揺らさないように足を平行に踏み出す。前の足に重心をかけて後ろの足を運ぶ歩き方では、重心が移動してしまうため体も左右に振れやすくなる。普段靴の踵や側面が擦れやすい人は足先の力だけで歩いている可能性が高いので改善を。正しい歩き方をすれば体幹を鍛えることにもつながる。

歩く
▼回る

腰を基点に上座に向かって回るのが原則。大切なのは重心を正しく移行することと、一つ一つの動作を明確に行うこと。腰から回ることで足を踏み替えずに、自然に足が運ばれる。座って回る場合は、跪座の姿勢から回りたい方向の膝を少し上げ、床についている膝で滑らかに押す。このように回るとほこりを立てず、物を運ぶ際も中身が揺れない。

回る
▼お辞儀をする

お辞儀は目線を外して自分の弱い部分を相手に見せることで、あなたを信頼しているという意を表す。頭を下げるのではなく、上体を腰から曲げること(屈体くったい)が重要。これを、息を吸いながら上体を倒し、吐く息でとどまり、再び息を吸いながら上体を上げる三息で行う(礼三息れいみいき)。呼吸と動作を合わせると、相手との呼吸も合いやすくなる。

お辞儀をする
▼物を持つ

物を持つときは、腰から指先への連動を意識し、二の腕を使って体全体で持つ円相が基本。体の前で大木を抱えるイメージで、肘は下げずに自然な丸みをつくる。持ち方には「目通り」「肩通り」「乳通り」があり、持っている物との関係性などによって使い分ける。目の高さに持つ目通りは賞状の授与、神棚や神社への供物をささげ持つ場合の姿勢。

物を持つ
和室への出入りの作法

襖の開け方

ふすまは、「体の中心より右にあるものは右手、左にあるものは左手で」を基本に開閉する。襖や雨戸など日本家屋の引き戸は、取っ手のやや下部に手を添えると開閉の動作がスムーズに。開けて入るなどの過程の動作を座って行う場合は、正座ではなく跪座の姿勢で。

襖の開け方
小笠原清基(おがさわら・きよもと)
1980年、東京都生まれ。31世宗家小笠原清忠氏の長男。3歳で稽古を始め、小学校5年生で鶴岡八幡宮の流鏑馬射手を務める。大阪大学基礎工学部卒業後、筑波大学大学院で博士課程(神経科学)修了。現在、製薬会社に勤務しながら、流儀を次世代へと伝承している。著書に『かしこい子どもに育つ礼儀と作法』(方丈社)など。

撮影=田子芙蓉

横山 久美子