今日生まれた赤ちゃんに日本の伝統を伝えたい

和える社長 矢島里佳(やじま・りか)さん

矢島里佳さんが和(あ)えるを起業したのは大学4年のとき。子ども向けの商品はすべて“ジャーナリスト活動”から生まれたという。

aeru gojoの前で。明治4年創業の糸屋さんに“同居”。

慶應義塾大学法学部に入学した矢島さんは、日本のものづくりの技術を脈々と受け継ぐ職人に会いたいと、出会った人に企画書を渡しては思いを語り、旅行会社の季刊誌や週刊誌のコラム連載を手がけることに。取材する中で、伝統産業の担い手が高齢化し、滅びつつあるといったステレオタイプの報道をくり返すメディアのあり方に疑問を感じた。

「実は多くの若い職人さんが魅力的なものづくりをされていたのです」

しかしそのことが知られていない。子どもの頃から伝統産業品に触れる機会があれば、伝統を次世代に伝える循環が途切れることはないはず。

「そこで“今日生まれた赤ちゃんに、日本の伝統を伝えるジャーナリスト”になろうと考えました」

(写真上)赤ちゃんから使える「宮城県から 桜の木の はさみ」。持ち手も刃も桜の木でできていて、紙がしっかり切れる。(同下)創業時、地道に手売りした本藍染の出産祝いセット(産着・靴下・タオル)は矢島さんの思い出の一品。

まだ言葉では伝わらない赤ちゃんには、モノを通して伝統を伝えよう。そんな事業を行う企業を就職先に探したが、見つからない。ないなら自分で創るしかないと起業を決意。東京都中小企業振興公社が主催する「学生起業家選手権」で得た優勝賞金で和えるを立ち上げた。「和える」とは異なるもの同士が互いの魅力を残しつつ新たな価値を創造すること。先人の智慧(ちえ)に今を生きる自分たちの感性・感覚を「和える」ことで伝統を次世代につなぎたいという思いがあった。当初はライター・講演活動で収入を得つつ、取材で意気投合した徳島の本藍染職人と二人三脚で「徳島県から 本藍染の 出産祝いセット」を開発する。“0から6歳の伝統ブランドaeru”の商品第1号に。

「学生でお金も何もない私には思いと行動しかなかった」という矢島さんは、どこに行くにも「出産祝いセット」を携えて手売りし、「今日生まれた赤ちゃんを日本の藍でお迎えする」という思いを伝え続けた。