聖武天皇が天然痘で行った減税政策
天然痘は、人だけが感染するウイルス性の感染症です。感染者の3分の1が死亡するだけでなく、感染力がものすごく強く、患者から剝がれたかさぶたでも1年以上感染力が残ります。人類とは非常に付き合いの長い感染症でしたが、1796年にイギリスの医師であるジェンナーが種痘法を開発したことで一気に患者数が減り、1980年にWHOが根絶宣言を出すなど、人類が根絶させた唯一の感染症といわれています。
天然痘については、日本におもしろい記録が残っています。『続日本紀』によると奈良時代、聖武天皇の頃に、朝鮮半島の新羅から九州経由で入ってきた天然痘が大流行しましたが、聖武天皇は「このところ災害が多いのは天からのとがめの兆しであり、すべての責任は為政者である私にある」と考えました。そこで聖武天皇は仏教への帰依を深め、奈良に東大寺と大仏、また全国に国分寺と国分尼寺の建立を命じました。いわゆる「鎮護国家思想(仏の力で災厄を鎮め、国を護る)」です。さらに太宰府より「多くの農民が臥せっているので今年の貢調(納税)を止めてほしい」と陳情され、許可しています。つまり聖武天皇は、仏にすがる以外に、減税政策も行っていたのです。
ただ天然痘は、その後国民病として定着し、日本は明治期に入るまで、1150年もの長い付き合いを余儀なくされることになります。
*出典:東京都健康安全研究センター
写真=iStock.com
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